整備士の人手不足―。問題が顕在化して何年も経過するが、いまだに解決の兆しは見えない。その中で、京都府自動車整備商工組合(城谷忠理事長)は外国人の活用にかじを切り、着実に成果を挙げている。2019年に全国の整備商工組合で初めて「外国人技能実習制度の監理団体」としての認可を受けた。コロナ禍で外国人の訪日がままならない逆風を経験しながらも、現在まで約25社、累計85人のカンボジア人の来日を後押しし、府内の整備工場で活躍している。23年11月末には、新たにフィリピンからの受け入れを開始する。人材活用の間口を拡大することで、外国人のさらなる就業を促していく。
■外国人に頼らざるを得ない現状
全国と同様、京都府でも整備士不足は深刻だ。特に京都は歴史的に教育熱が高いのが特徴で、文部科学省「学校基本調査」によると21年度の大学進学率は69.8%で全国の都道府県別でトップだった。大学進学者数の多さはそのまま専門学校を選択する層の少なさを意味する。
事態の改善に向けて京整商ではいち早く対応に乗り出し、18年からカンボジアの視察、評価試験、人材の受け入れを開始した。その流れで監理団体としての認可を受けてカンボジア人の入国から就業、業務中の多岐にわたるサポートを手掛けている。
現地では求人票をベースに人材を募集し、日本語教育などの研修を実施した上で技能実習生を送り出す。若者の車離れが課題の日本と異なり、カンボジアでは自動車整備に対する興味が強く、優秀なスタッフを迎え入れることが可能だ。
このため、外国人を受け入れた事業者ほど増員を図る傾向が顕著だ。日本人と異なるメンタリティーを持つ人材を雇用するだけに、現場スタッフが抵抗を示すケースもあるが、時間の経過とともに徐々に融和が進んでいくという。
■語学力に長けた人材が安心材料に
とはいえ、日本とは異なる環境、気候、文化、風習での生活を余儀なくされるだけに、ストレスが大きいことは想像に難くない。京整商では石村直哉技能実習生監理部マネージャーを仲介役として、外国人と現場の緩衝材の役割を果たす。
自身はホンダ系の整備専門学校を卒業後、ホンダディーラーでの勤務を経ており、一級自動車整備士資格を取得済み。カンボジアでの滞在経験が豊富で、現在でもクメール語のスキルアップに余念がない。カンボジア人にとっては母国語で直接コミュニケーションできることのメリットは計り知れない。
特に、「整備スキル、日本語の上達スピードなど個人差は大きいだけに、一人ひとりを丁寧に見ていくことが重要だ」(石村マネージャー)と強調する。日常の相談事、業務の悩みなども聞きながら、きめ細かくサポートする。同時に、年1度はカンボジア人同士が交流する機会を設け、連帯感の醸成と業務へのモチベーション向上に役立てている。
◇
国内では若年人口の減少傾向が続き、今後の反転は難しい。それだけに、京整商では今後も外国人の受け入れを働き掛けていく考えで、12月~24年2月に約20人が新たに来日し、府内の整備事業者での勤務を開始する見込みだ。
カンボジア人にとっては勤務先の周辺に多くの同胞人が在籍することになり、有形無形の安心感にも結び付く。「国全体で20歳代の若い人材が多く、素直で指導しやすいのも有利だ」(同)としており、今後も引き続き積極的に人材を受け入れていく考えだ。(関西支社・谷口 利満)
※日刊自動車新聞2023年(令和5年)11月10日号より