運転者が意識を失うなどした際、自動的に車両を止める「ドライバー異常時対応システム」(EDSS)の導入が始まった。国内では、重大事故を防ぐため大型バスなどが先行したが、乗用車でもマツダが高速道路、一般道路を問わず作動するEDSSを「CX―60」に搭載した。ホンダも2024年以降に発売する次世代の運転支援システム車で搭載を目指す。高齢ドライバーの事故が後を絶たない中、EDSSの普及による事故防止効果が期待される。
EDSSは、カメラなどを通じて運転者の挙動を監視し、異常を検知するとまず警告を出す。それでも運転者が反応しない場合、自動で減速して停止する装置だ。周囲の車両に異常を知らせるためハザードランプを点滅させたり、ホーンを鳴らしたりもする。自動で止まるだけでなく路肩に寄せたり、停車後に緊急通報する機能を持つ装置もある。
日野自動車は、世界で初めて商用車用EDSSを18年7月に発売した大型観光バス「セレガ」で実用化した。この後、いすゞ自動車や三菱ふそうトラック・バスもEDSS搭載の大型車を投入した。
国土交通省によると、運転手の健康起因による事故(20年)は、路線バスと観光バス合わせ全国で131件、トラックで105件発生し、なお増加傾向にある。EDSSにより、運転手が意識を失うなどしても乗客の安全を守る効果が期待される。
日本の乗用車メーカーでは、高速道だけでなく一般道でも作動するEDSS技術をマツダが21年11月に公開し、CX―60で一部機能を実用化した。トヨタ自動車やスバルなどもEDSS搭載車を出しているが、高速道路上での運転支援機能作動時に作動するもの。マツダのEDSSは高速道では路肩に寄って止まり、一般道では同一車線内で止まる。マツダは今後、搭載車種を増やす方針だ。
ホンダもEDSSを開発中。自動運転「レベル3」(条件付き自動運転)の「レジェンド」で培ったノウハウも使って開発を進め、24年以降の実用化を目指す。
国交省は今年1月、EDSSについて、舵取り装置に関する国連規則(79号)の適用を決めた。今後、EDSSを搭載する場合、①作動開始の少なくとも5秒前に警報する②減速度は4㍍/2s③車線変更して止まる場合は変更先車線の安全を確認する―などの要件を満たす必要がある。一方で要件の明確化により、搭載車種の増加も期待できそうだ。
(織部 泰)
※日刊自動車新聞2022年(令和4年)12月10日号より