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自動車業界トピックス

「ライドシェア」の議論再熱、岸田首相が導入検討の加速を指示

タクシー業界は「反対」姿勢を改めて鮮明に

一般ドライバーが自家用車で乗客を運ぶ「ライドシェア」の導入議論が再び熱を帯びてきた。インバウンド需要の回復や一部地域などでのタクシー不足を背景に、政府は新設した「デジタル行財政改革会議」でライドシェアの導入に向けた議論を加速させる。岸田文雄首相も、23日の臨時国会の所信表明演説で導入に向けた検討を表明する見通し。一方、タクシー業界と与野党の議員連盟などは反対姿勢を強めつつある。議論の行方が注目される。

ライドシェア議論が再び活発に

11日に開かれたデジタル行財政改革会議の初会合で、議長役を務める岸田首相は、ライドシェアの導入に向けた規制緩和の議論や検討を加速するよう関係閣僚に指示した。その後、16日の関係会議で「課題発掘対話」が行われ、全国ハイヤー・タクシー連合会の川鍋一朗会長は「安全性が担保されない形態のライドシェアは利用者保護、労働者保護の双方の観点から問題が多い」と指摘。さらなるタクシーの規制緩和で課題の解決は可能だと訴えた。同連合会は先月末の総会で、ライドシェア解禁の阻止を決議したばかりだ。

ライドシェアについては、自民党内でも賛否両論ある。菅義偉前首相や河野太郎デジタル相らが導入に向けた検討を求める一方、タクシー・ハイヤー議連が17日に開いた会合で「安易なライドシェアは認めるわけにはいかない」(幹事長を務める盛山正仁文部科学相)と反対意見も相次いだ。連合(芳野友子会長)も基本的に反対の立場だ。

これまでの国会答弁におけるライドシェアの定義は、運行管理や車両整備の責任主体を置かず、自家用車のドライバーのみが運送責任を負う形態を前提としたもの。こうした形態の旅客運送を有償で行うことは「安全・安心の確保、利用者の保護などの観点から問題がある」(国土交通省)との考えだ。いわゆる「白タク」として道路運送法でも原則禁止している。

ライドシェア導入推進派も安全の担保は必要との考えだ。河野デジタル相は、タクシーの規制緩和も同時に検討・推進することが必要だとした上で「それぞれの地域でいろいろなサービスの提供を考えていかないといけない」と語る。

タクシー業界を所管する国交省は、人手不足などで公共交通が不十分な地域には、自家用有償旅客運送も組み合わせて交通サービスを確保していくことが重要とする。2月に検討会を設置し、制度や運用の見直しなどを進めてきた。今後、早急に展開できるものから順次、通達などを出して実施していく考えだ。18日の観光立国推進閣僚会議に提出された「オーバーツーリズムの未然防止・抑制に向けた対策パッケージ案」でも、タクシー不足に対する緊急措置を盛った。

自治体でもライドシェアの導入議論が活発になり始めた。神奈川県は「神奈川県版ライドシェア検討会議」を設置し、20日に初会合を開いた。大阪府は11月に有識者会議を設け、2025年大阪・関西万博の開催期間に限定した導入を目指して議論に入る。

斉藤鉄夫国交相は20日の閣議後会見で「安全・安心を大前提にタクシー不足への対応について神奈川県の議論に協力していきたい」と語った。ただ「安全確保や利用者保護などの観点で問題があってはならない」とも注文をつけた。

ライドシェアの導入に向けた機運が高まっていることについて、斉藤国交相は「安全・安心を大前提に利用者の移動需要に交通サービスがしっかりと応えられるように、デジタル行財政改革会議とも連携しながら、さまざまな方策を検討していきたい」と答えた。

27日には、超党派議員で構成するタクシー政策議員連盟の総会が衆議院議員会館で予定されている。ライドシェアをめぐる動向と対策を協議する見通し。12月13日までの会期となる臨時国会でも、ライドシェアの是非をめぐる議論が交わされそうだ。

※日刊自動車新聞2023年(令和5年)10月23日号より