与党は10日、2021年度の税制改正大綱を決定した。来春に期限切れが迫っていた「環境性能割」の臨時軽減措置と、「エコカー減税」の延長が確定。自動車業界が求めていた「新型コロナウイルス禍において増税なし」という要望がほぼ叶えられた格好だ。長期化する新型コロナに対応し、来年度に限って「固定資産税」の税額が増えないようにするなど、企業や国民の負担を軽減する措置も取り入れた。政府が力を入れる脱炭素化やデジタル化に取り組む企業の法人税負担も軽くするなど、コロナ後を見据えた構造変革を後押しする中身となっている。
環境性能割を1%軽減する時限措置は、来年末まで9カ月間延ばす。新型コロナの影響による新車販売を下支えするため、再び延長する形となった。2年間の延長が決まったエコカー減税はクリーンディーゼル車の取り扱いが厳格になったものの、対象車種は現行基準と同様の約7割を確保しており、引き続き新車需要を後押しする効果が得られる見通しだ。
一方、自動車関係諸税の今後の検討課題には「『2050年カーボンニュートラル』目標の実現に積極的に貢献する」という記載が付加され、日本の脱炭素化には自動車が鍵を握ることも裏付けられた。さらに、「課税のあり方について、中長期的な視点に立って検討を行う」との表現も残され、今後、将来を見据えた本格的な議論がスタートすることも期待される。
また、脱炭素化やデジタルトランスフォーメーション(DX)につながる設備投資を行った企業に対し、法人税を一定割合控除する。コロナ禍だけでなく、大きな変革期を迎えている自動車産業ではグリーン化やデジタル化に活路を求める企業が多い。新たな優遇措置により、こうした企業の取り組みを後押しするのは間違いなさそうだ。
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日本自動車工業会の豊田章男会長は10日、2021年度の税制改正大綱で環境性能割の臨時的特例措置が延長されたことなど受けて「自動車ユーザーの負担増を回避するとともに国内市場の活性化にもつながる」と歓迎の声明を出した。サポカー補助金の延長も「安全なクルマの普及促進に資する」と評価した。
自工会では、リーマンショックを上回る厳しい経営環境を踏まえ、「コロナ禍において増税なし」と税負担軽減やエコカー減税における減免対象の維持などを要望していた。今後の自動車税制に向けては、カーボンニュートラルや新しいモビリティ社会を見据え、「自動車ユーザー以外を含めた新たな受益と負担の再構築や保有時を含めた税負担の一段の軽減と簡素化」などについて、関係者との議論を深めていく考えを示した。
※日刊自動車新聞2020年(令和2年)12月11日号より