経済産業省は、5月をめどに「CCS(二酸化炭素回収・貯留)長期ロードマップ(RM)」の中間取りまとめを行う。成果は政府が6月の取りまとめを目指す「クリーンエネルギー戦略」に反映させる。CCSは火力発電における二酸化炭素(CO2)排出量の低減などが図れるため、自動車を含む製造業のサプライチェーン全体での脱炭素化につながる。中間とりまとめを機に、技術確立の課題になっているCO2の回収コスト低減や、事業者へのインセンティブ検討などの進行を早め、脱炭素化の基盤づくりを急ぐ。
CCSは工場などから排出された気体の中からCO2を分離し、地中深くに貯留、圧入する技術。日本ではまだ実用化されておらず、現在、北海道苫小牧市で社会実装を見据えた大規模実証が進められている。すでに30万㌧のCO2貯留に成功しており、政府はこの成果を踏まえ30年中の事業化を目指す考えだ。
事業化の課題になっているのは、現状でコストの大半を占めるCO2の分離回収費用の低減。固体吸収剤を用いてコストを従来の半分以下に抑えたり、特殊な膜を使ってCO2だけを分離させたりなど多様な方法があり、事業化に向けた最適な技術案をRMで示す考え。合わせて、目標とする年間貯留量や企業へのインセンティブ制度の導入なども検討していく。
CCS技術は製造業の領域での活用も期待される。分離したCO2を埋めずに利用する「CCUS」技術を用いることで、化学工場や製油所、発電所から出たCO2を削減できる。政府が掲げる「50年カーボンニュートラル実現」には、ライフサイクルアセスメント(LCA)全体でのCO2削減が必要になるため、CCS技術はエネルギーや素材の調達フェーズで脱炭素化に貢献する可能性を持つ。
※日刊自動車新聞2022年(令和4年)2月7日号より