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自動車業界トピックス

「NOx・PM法」見直しで旧型ディーゼル車が登録可能に

根強い人気のRV 愛好家には朗報 中古車市場の動きに注目

環境省が、自動車の窒素酸化物(NOx)および粒子状物質(PM)の排出規制「NOx・PM法」の見直しを進めている。規制対象となる「対策地域」の解除指標を新たに設け、その指標を満たせば各自治体の判断で指定解除を申請できるようになる。指定解除地域では、ディーゼル乗用車の旧型車をはじめ、従来の規制対象車種の登録や運行が可能になる。規制対象に該当する車両は車齢20年を超える車種がほとんどで保有台数は限られるものの、中古車市場ではディーゼルエンジンを搭載した“レクリエーションビークル(RV)”の人気は根強く、ディーゼル車の愛好家には朗報となりそうだ。

旧型ディーゼル車は今も根強い人気(写真はランドクルーザー70系)

NOx・PM法は、大気汚染や健康被害の要因とされる自動車排ガス中のNOxとPMの排出削減を目的に2002年に施行された。規制施行前に当時の東京都知事だった石原慎太郎氏が真っ黒な粒子が詰まったペットボトルを振りディーゼル車の規制を訴えた様子が世間にインパクトを与えた。これがきっかけとなり、自動車業界の予想を上回るスピードで規制が進められることになった。

規制の対象地域は東京、神奈川、埼玉、千葉、愛知、三重、大阪、兵庫の8都府県の約270市区町村。該当地域では、排出基準に適合しないトラックやバス、ディーゼル乗用車などは車検が通らなくなり、継続して乗る場合はDPF(ディーゼル微粒子除去装置)などの後付けが必要になった。加えて、首都圏や大阪、兵庫では他地域からの乗り入れを含め該当車両の域内走行が禁止されたため、対策地域外の事業者や車両オーナーも対応を検討する必要が生じた。

規制当初は運送事業者などから反発の声が挙がったものの、規制適合車の燃費改善などに連れて車両代替えが進み、規制対象車の保有は年々減少。そしてクリーンなディーゼル車が普及した結果、対策地域内で02年当時には30%未満だったNOx・PM法排出基準適合率が、足元ではほぼ100%に到達した。

石原都知事(当時、1999年)の“黒いペットボトル会見”

このように改善が進んだことを受け、環境省は対策地域を解除できる仕組みづくりに乗り出した。解除には「NOx、PMの濃度や排出量が減少、または低い基準で横ばいであること」「交通量が今より2割増えても国の環境基準を達成できること」という現状以上にクリーンな大気を維持するための指標を複数設け、これを達成できることを条件とする。環境省によると、約270の対策地域のほとんどがこの指標を満たすという。

指定解除後は、車種規制も廃止されるため、該当車両の保有や対象地域への乗り入れが可能になる。DPFの装着も不要となる。解除の判断は各自治体に一任し、環境省は早ければ22年度にも申請の受付を開始する考えだ。

環境省は旧型のRVなど不適合車は保有数が少なく、対策地域内を走行しても大気に及ぼす影響はほとんどないと判断している。不適合車は現在、新車の取り扱いがないものの、中古車市場では関連した動きが予想される。特にトヨタ自動車「ランドクルーザー」、三菱自動車「パジェロ」といったRVは、近年のアウトドアブームもあり需要が高い。中古車市場ではNOx・PM法の規制対象車両の流通がいまだにも見受けられる。

足元ではコロナ禍でクルマの選び方が多様化しており、中古車を選ぶユーザーも増えている。母数は多くはないものの、NOx・PM法の見直しをきっかけに、一時代を築いた2000年以前の旧型ディーゼル乗用車が個人向けを中心に市場で動く可能性が注目される。

(村田 浩子)

※日刊自動車新聞2022年(令和4年)1月13日号より