インドの経済団体、インド工業連盟(CII)会長で、TVSサプライチェーン・ソリューションズのR・ディネシュ会長が5日、東京都内で日刊自動車新聞の取材に応じ、インドの若年層の日本での就労を後押しする考えを明らかにした。自動車や物流などの分野を想定している。ディネシュ会長はまた、TVSグループが三菱商事と連携して始める自動車販売事業で、インド車に加えて日本車のブランドを広く扱う考えも示した。
ディネシュ会長らCII幹部らが経済使節団として来日し、インド大使館(東京都千代田区)で開かれたカンファレンスに出席後、本紙の取材に応じた。
CIIは、経済界として日本への人材派遣を通じ、両国の経済連携を強化する方針。日本
では、最長5年間の就労ができる「特定技能制度」や、技能実習に代わる「育成就労制度」を視野に、今後5年間で82万人(上限)の受け入れを見込んでいる。
ディネシュ会長は、自動車や物流関連、観光などを候補に「日本で経験を積み、技能や日本の商慣習を身につければ、帰国して両国の連携を進める人材になる。またその人材が、いずれ日本で働くといった循環が考えられる」と語った。
政府によると、在住外国人は昨年6月末時点で約322万人で、中国人が約79万人、ベトナム人約52万人などに対し、インド人は5万人弱にとどまる。また、インドでは人口の
約半数が30歳以下で、経済成長を続けるなかでも若年層の雇用確保が社会的な課題だ。日本に人材を送り込めば、少子高齢化で担い手不足が深刻化している日本の製造業や物流業といった部門で貢献するとともに、自国の雇用情勢改善にもつながる。CII幹部は「特に自動車関連は重要な柱だ。人材を日本に送ることで、中長期の研究開発などにもプラスになる。日本での就労経験のある人材がいることは、日本企業の対インド投資の後押しにもなる」と期待を寄せている。
ディネシュ会長は、TVSグループが進める三菱商事と連携した自動車販売で、日本車のブランドを増やし、ハイブリッド車や電気自動車(EV)を含め、日本車のシェア拡大を図る考えを示した。EVについて「インドでは、ラスト(ワン)マイルの移動ニーズがある」とも指摘した。
三菱商事は、インドの自動車市場について、23年に新車販売508万台と、世界3位に成長したことを踏まえ「今後も6~7%の高い成長率が期待される」とみる。インドは石油資源を輸入に頼り、ガソリン代や軽油代が高いこともEVが有望視されている一因という。
CIIは会員約9千社で、日本の経団連に相当する。ディネシュ会長は、自動車販売大手TVSモビリティグループの物流部門も率いている。
(山本 晃一)
※日刊自動車新聞2024年(令和6年)4月9日号より