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自動車業界トピックス

ウクライナ侵攻から1年、自動車メーカーの「脱ロシア」が加速

生産や販売から相次ぎ撤退

ロシアによるウクライナ軍事侵攻から24日で1年が経過した。日本の自動車メーカーは、生産や新車販売から相次ぎ撤退し、事業撤退関連の特別損失を計上。最終判断を協議中のメーカーもある。侵攻の影響によるエネルギー高も長期化の様相を呈しており、事業環境の先行きを見通しにくい一因となっている。

2022年3月に生産を停止したトヨタ(TMMR)のサンクトペテルブルク工場

トヨタ自動車は、22年9月にロシア事業からの撤退を発表した。3月から生産を停止していたサンクトペテルブルク工場を閉鎖し、輸出による新車販売の終了も決定した。現在は土地や設備の売却を進めているが、補修部品の供給は続ける方針だ。

日産自動車は、サンクトペテルブルク工場やモスクワの販売・マーケティングセンターをロシア国営の自動車・エンジン中央科学研究所(NAMI)に1ユーロ(約143円)で売却した。事業撤退に伴う特別損失は10~12月期に864億円を計上、4~12月期では1105億円に膨らんだ。

マツダはウラジオストク市にある車両組み立て・販売の「マツダソラーズマヌファクトゥリングルース」の株式を合弁相手のソラーズに1ユーロで譲渡した。関係会社整理の特別損失として10~12月期に約109億円を計上した。

日系自動車メーカーが相次いでロシアでの事業撤退を決める一方、協議を継続中のメーカーもある。カルーガ州にステランティスとの合弁工場を持つ三菱自動車は「ロシア事業については、いろいろなオプションを含めて検討している」(池谷光司副社長)と最終判断には至っていない。今期いっぱいは現地での生産停止が続く前提で、部品在庫の廃却や建物・設備の減損などを行い、10~12月期はロシア事業関連の特別損失を約87億円計上した。4~12月期は約92億円に拡大している。

いすゞ自動車は、ウリヤノフスクにある双日との共同出資会社、いすゞルスでの生産と日本からの出荷を停止している。ロシア事業の方向性についてパートナーと協議中だが、「前回(22年11月)も話したが、現時点で決まったものはない」(中俣直人常務執行役員・第3四半期決算発表で)と進展はみられない。

帝国データバンクが20日に発表した日本企業のロシア進出状況調査によると、ロシアに進出している主要企業168社のうち、ロシア事業からの事実上の撤退または撤退計画を明らかにしたのは27社で、全体の16%を占めた。

撤退企業は22年8月時点で10社に満たなかったが、今年2月までの半年間で新たに約20社の撤退が判明した。大手自動車メーカーや関連企業を中心に、一時的な事業停止から完全撤退、事業・現地子会社の売却など恒久的な〝脱ロシア〟に移行しつつある。

撤退理由では、ロシア事業に依存することで企業へのマイナス評価となるレピュテーション(評判)リスク以外にも、サプライチェーン(供給網)混乱による部品調達難や需要縮小などが目立った。

帝国データバンクでは、事業売却先の選定が進まないことや、ロシア当局からの認可が得られないなど新たな課題があるものの「日本企業のロシア撤退は今後も進むとみられる」(情報統括部)と分析している。

ロシアの軍事侵攻が長期化し、依然、終結のメドが立たないなど情勢は混迷を極めている。先鋭化する国際対立やエネルギー高は、グローバルで事業を展開する自動車メーカーの先行きを一段と不透明にしている。

※日刊自動車新聞2023年(令和5年)2月24日号より