エネルギーや物流費、原材料など、自動車関連を含む中小・零細(小規模)企業は苦境に直面している。政府は経済界に対して賃上げを要請しており、人手不足の中で労務費の上昇も不可避だ。健全なサプライチェーン(供給網)を維持するには、中小企業に対する取引の適正化を迅速に進める必要があり、政府も大企業に対して価格協議に応じるよう呼びかけている。
中小企業庁が昨年、約1万5千社の中小企業に対して行った調査によると、労務費やエネルギーコストの価格転嫁が「全くできていない」と回答した企業は約3割に上った。特に自動車関連業は全業種の平均値を下回っており、製造や輸送において増えたコストをそのまま負担している状況だ。
足元では、ウクライナ危機によるエネルギー高が続いている。原材料価格の高騰にも拍車がかかり、中小企業は厳しい経営を強いられている。この状況を打開するため、中小企業庁は、下請中小企業振興法の「振興基準」を改訂し、大企業に対し年に1回以上の価格協議を実施することを新たに求めることにした。足元の経済情勢を踏まえた価格交渉を行うよう求めることで、中小企業の負担軽減を目指す。来年度からは価格転嫁の実態を調査する「下請けGメン」も300人に増やし、価格交渉における不公平を是正していく。
エネルギー高、輸送費、原材料価格―自動車関連企業には全てのコスト上昇がダイレクトに響く。自動車産業の9割以上は中小企業が占めており、この領域の価格転嫁が上手く機能しなければ、産業全体の後退にもつながりかねない。単に法令対応だけでなく、サプライチェーンを強靱化したり、共存共栄を図る発想も求められそうだ。
※日刊自動車新聞2023年(令和5年)1月7日号より