日刊自動車新聞社が自動車部品メーカーを対象に実施した2023年度(23年4月入社)の新卒採用計画のアンケート調査によると、回答したサプライヤーの半数以上が22年度実績(22年4月入社)よりも採用人数を増やすことが明らかになった。新型コロナウイルス感染拡大や、半導体不足などによる自動車生産の減産で、サプライヤーの経営環境は厳しい。車の電動化や自動運転など、自動車技術の変化に対応するため、理系を中心に、積極的な人材確保に前向きだ。
新卒採用アンケートは部品メーカー111社を対象に3月中旬~4月上旬に実施し、73社から回答を得た。採用計画は「22年度(22年4月入社)実績よりも増やす」が37社で全体の50.7%と全体の半数を占めた。「例年並み」が26社で、「減らす」は5社にとどまった。
理系人材を中心に新卒採用を強化する部品メーカーが目立つ。自動車メーカー各社が電気自動車(EV)などの電動車シフトを加速する中、部品メーカーも電動車に対応する製品開発が急務となっているためだ。同じ理系でも、内燃機関車では機械系が主流だが、EVでは化学系や電気・電子系の人材が即戦力として活用できる。「将来の事業拡大を見据えると、従来の出身学科の学生と並行して異なる学科出身の人材確保も必要となっている」(豊田鉄工)。
生産技術に関してもIoT(モノのインターネット)や人工知能(AI)などを活用して生産効率化を推進する「デジタル・トランスフォーメーション(DX)」に対応できる人材のニーズが高まっている。ファインシンターなどもデジタル関連の人材確保を注力分野として挙げる。
また、「定年退職者の増加などで、長期的に人材確保を強化」(ミネベアミツミ)しているケースも少なくない。JVCケンウッドは退職者の増加に伴って採用人数を増やす方向で検討しているという。「若手人材が乏しい」と回答した丸順では、技術系や工場など、現場での業務に関して理系のみを対象としていたが、対象者を文系にも広げて人材確保に乗り出している。
投資ファンドによる経営再建を進めてきたパイオニアは構造改革が完了、新卒採用を強化する。22年度は事務系1人、技術系3人の採用人数だったが、23年度は事務系14人、技術系20人を採用する計画だ。
一方、「減らす」と回答したのはエイチワン、エフ・シー・シー、小糸製作所、豊田合成、フタバ産業。エフ・シー・シーは新規事業に注力するため、即戦力となる中途採用を強化する方針で、豊田合成も中途採用に重点を置く。小糸製作所は「新型コロナウイルス感染拡大や電子部品の供給ひっ迫、ウクライナ情勢などで先行きが不透明」として一旦採用人数を減らし、先行きを慎重に見極める方針だ。
一方、22年度の採用活動で採用人数が「計画通り」だったのは39社で、「計画より少ない」が28社だった。依然として計画通り採用できないサプライヤーも少なくない。
※日刊自動車新聞2022年(令和4年)4月12日号より