多様なモビリティが展示された「ジャパンモビリティショー2023」の会場は、自動車整備の仕事の魅力をアピールする新たな舞台となった。ショーには自動車整備人材確保・育成推進協議会と国土交通省が共同でブースを出展。さらに、子ども向けの職業体験施設「キッザニア」とのコラボレーション企画「アウトオブキッザニア・イン・ジャパンモビリティショー」でも、整備の仕事を体験する機会が設けられた。参加した子どもたちは、熱心に作業に取り組んでいた。
同協議会・国交省のブースでは、①車の点検・整備の体験②大型車のタイヤの点検③エンジン分解・組立体験―などのプログラムを用意した。自動車メーカーの社員や自動車整備士を目指す学生などがインストラクターを担当した。ボンネットを開けてブレーキ液や冷却水などの残量を確認しつつ、エアコンフィルターの交換にも挑戦。大型車のホイールナットの締め付け具合をハンマーで確認したり、小型エンジンを分解して組み付けたりした。インストラクターの説明を聞きながら、真剣に取り組む子どもが多かったほか、汚れた部品を手にとまどう子どもの姿もあった。
ブースには、子ども用のサイズにした各自動車メーカーのつなぎも用意。参加した子どもたちは、それぞれ好きなつなぎに着替えて整備の〝仕事〟に臨んだ。作業を終えると、整備士体験修了証にスタンプを押し、一人ひとりに手渡していた。
一方、キッザニアとのコラボ企画には日本自動車販売協会連合会(自販連、金子直幹会長)とスバルが、整備関連のプログラムを提供した。自販連は「ディーラーメカニックの仕事」と題し、タイヤ交換とジャッキアップした車両の下回りの点検機会を提供。子どもたちは寝板に乗って車の下をくぐり、車体の下部に貼られた文字をチェックするなどしていた。スタッフは自販連の四宮慶太郎副会長が会長を務めるネッツトヨタ神戸(四宮康次郎社長、兵庫県尼崎市)の社員がリーダー役となり、それ以外は東京都内のディーラーに勤務する整備士らが日替わりで担当した。
スバルは「レースメカニックのお仕事」というテーマで、タイヤのホイールナットの締め付けと空気圧のほか、灯火類の点検を体験できる場とした。このうち、タイヤの作業は参加した子どもが、3人ずつ2グループに分かれて作業スピードを競い合った。また、仕事場は独ニュルブルクリンクで行われる24時間耐久レースに設定。同レースで使用したマシンをブースに持ち込み、サーキットのピットスペースの雰囲気を演出した。
一般公開の初日に当たる10月28日は、午前中から多くの子どもたちが、整備体験ができるブースを訪れていた。自販連のブースでは、土曜、日曜、祝日の予約枠が埋まるほど活況だったという。参加した子どもの中には、仕事を終えると、インストラクターとハイタッチを交わして喜び合う姿もみられた。保護者も写真や動画を撮影しながら、作業の様子を見守っていた。
自販連の担当者は「参加した子どもたちに、この体験が残ってくれれば」と、自動車産業の将来を担う新たな人材づくりに、これからも業界を挙げて取り組んでいく考えを示していた。
◆月刊「整備戦略」2023年12月号で特集「あらゆるモビリティが未来を示す―ジャパンモビリティショー2023―」を掲載します。
※日刊自動車新聞2023年(令和5年)11月24日号より