タイヤメーカー各社が商用車向けのサブスクリプション(定額利用)サービスに力を入れている。「2024年問題」への対処を迫られる運送事業者に向け、運行効率や安全性の向上、人手やコストの削減を謳(うた)う。日本ミシュランタイヤは「ミシュランタイヤケア」を展開。住友ゴム工業は「エコスマートプラン(ESP)」を拡充する。トーヨータイヤも「TOYO定額プラン」のサービス強化に向けて実証を重ねる。タイヤは「運行三費」の一角を占めるだけに、各社は運送事業者のニーズに応え、サービスを定着させたい考えだ。
ミシュランタイヤケアは、アプリに入力された点検データからタイヤのメンテナンス時期を〝見える化〟し、点検やローテーションサイクルの最適化を目指すサービスだ。同社はさらに、新人ドライバーの早期戦力化に役立ててもらおうと、「ドライバー診断」も始めた。ドライバーへのアンケート結果を同社と専門のコンサルタントが分析するサービスだ。
住友ゴムは、ESPに空気圧管理サービスを加えた「安全パッケージプラン」を7月にリリースする。空気圧センサーを装着することで、タイヤの空気圧や温度をグラフ化して把握。異常があった場合には通知を受け取ることもできる。同社自慢の「センシングコア」の導入も進んでおり、24年の乗用車に続き、商用車への導入も見据える。取得データから偏摩耗や脱輪の防止、過積載、積荷バランスなどを予測・通知することができるという。この技術を生かし、物流事業者向けの車両管理ソリューションの提供などを目指していく。
トーヨータイヤは「TOYO定額プラン」のサービス拡充に向け、23年8月にシモハナ物流(下花実社長、広島県坂町)と、タイヤ空気圧・温度モニタリングシステムの実証を行った。25年度をめどにサービス開始を目指す。
各社は脱炭素の一環としてもこうしたサービスをPRする。例えば、摩耗したタイヤの接地部分のゴムを貼り替えて再利用する「リトレッド(更生)タイヤ」だ。新品タイヤの生産に比べ、資源の使用量を約69%、二酸化炭素(CO2)排出を約65%、削減することができる。
海外では、リトレッドタイヤのシェアが5割ほどなのに対し、新品志向が強い日本は2割程度にとどまるものの、コストや環境意識の高まりとともにシェアは増加傾向にあるという。トーヨータイヤの関係者は「廃棄物を出さないために、バランスよくリトレッドタイヤを使用してほしい。課題は安心して使ってもらえる提案を行うことだ」と語った。
日本ミシュランはリトレッドに加え、摩耗したタイヤに再び溝を刻む「リグルーブ」も手掛けている。リグルーブは、国内では同社だけが推奨する手法で、タイヤの寿命を最大で25%ほど延ばせる。リグルーブ後は転がり抵抗が下がり、燃費の向上にもつながるという。同社のタイヤは、リグルーブやリトレッドの使用を前提に設計されており、リグルーブ後にリトレッドを行うこともできる。新品、リグルーブ、リトレッドと使用を重ねることで省資源化や脱炭素化への貢献をPRしていく。
トラック運送事業の場合、運送原価は「車両費」「人件費」「運行三費」が主に占める。運行三費とは燃料油脂費、修理費、そしてタイヤ・チューブ費のことだ。タイヤ各社は運送事業者のコスト削減や安全確保のニーズを取り込み、サブスクリプションサービスを広げたい考えだ。
(雨宮 芽生)
※日刊自動車新聞2024年(令和6年)5月25日号より