ダイハツ工業は、当初2050年を目標としていた車両生産工場から排出する二酸化炭素(CO2)排出量実質ゼロを35年に前倒しする。塗装工程の設備などを見直し、CO2排出量の低減を図るとともに、再生可能エネルギーの活用、CO2クレジットの購入などを併用して生産活動でのカーボンニュートラルを実現する。まず22年に完成予定の京都工場(京都府大山崎町)の新棟でCO2排出量を低減した生産工程を導入し、その後、他の工場にも横展開していく方針だ。
ダイハツの奥平総一郎社長が1日、日刊自動車新聞のインタビューで生産工場でのCO2排出量実質ゼロを前倒しする新たな目標を明らかにした。親会社のトヨタ自動車が35年までに世界の全工場でCO2排出量を実質ゼロにする目標を掲げており、グループ会社として歩調を合わせる。
ダイハツはこれまで、生産活動でのカーボンニュートラルを実現する目標年次を50年とし、実行計画である「環境アクションプラン2030」で30年のCO2排出量を13年比35%減らす計画だった。
CO2排出量を低減した車両生産は、現在建設中の京都工場の新棟で先行して取り組む。CO2排出量が多い塗装工程には、乾燥炉で使用するエネルギーを低減できる設備を導入するなど「生産時のCO2排出量削減をリードする工場」(奥平社長)とする。京都工場での取り組みは他の工場にも順次、横展開していく。
再エネの活用も推進する。滋賀工場(滋賀県竜王町)は、地元の近江牛の糞尿から抽出したバイオガスを燃料に使用するバイオメタン発酵プラントで発電した電力を活用する実証試験を進める。生産活動でのCO2排出量削減と再エネの活用でCO2排出量実質ゼロに届かない量については排出権取引を活用する。
自動車メーカー各社は、日本政府をはじめ主要先進国が掲げた50年のカーボンニュートラル実現に向けて、生産活動でのCO2排出量削減する取り組みを本格化している。日産自動車は30年に19年比で41%削減、三菱自動車は事業活動全体で14年度比40%削減を打ち出している。トヨタとダイハツは35年に生産活動でのCO2排出量実質ゼロという意欲的な目標を掲げて地球環境対策を主導する。
※日刊自動車新聞2022年(令和4年)2月2日号より