ダイハツ工業が起こした認証不正。同社が設置した第三者委員会は「まずもって責められるべきは、不正行為を行った現場の従業員ではなく、ダイハツの経営幹部である」と糾弾した。同社は、国土交通省へ9日に提出した再発防止策を着実に進めるとともに、3月1日付でダイハツのトップに就く井上雅宏氏を筆頭とした新たな体制で、不正を30年以上許した企業風土の刷新などに挑む。
同社は、2023年4月に認証申請に関する不正行為を公表し、同年12月には第三者委報告として、生産終了車を含む国内外の64車種と3エンジンで不正が発覚したことを公表した。第三者委が実施したアンケート(複数回答可)では、不正の要因として「開発スケジュールが過度にタイトになる傾向」(79.9%)、「公表された発売時期や開発日程順守のプレッシャー」(69.6%)、「人員不足」(57.4%)、「社風・組織風土」(48.0%)、「個人のコンプライアンス(法令順守)意識」(35.3%)などの声が寄せられた。
ダイハツが9日、国交省に提出した再発防止策では①風土改革②経営改革③モノづくり・コトづくり改革の3点で組織にメスを入れる。①と②は組織全体の業務体制の再構築、③は車両開発の管理手法改善、不正を起こせない体制にするための法規・認証関連業務の構築という位置づけだ。
ダイハツの場合、11年に発売した「ミライース」を17カ月という短期間で開発したことが成功体験となり、以降もこの成功体験にとらわれた開発スケジュールを優先させたと指摘される。再発防止策では、従来比で1.4倍とした標準日程を社内で規定する。人員面では、法規認証室の人員を23年1月比で6倍に増やし、6月までには7倍とする。安全性能評価に関わる人員も同1.5倍に増やした。奥平総一郎社長は「業務量を適正にし、余裕や余力をつけるところから始める」と語った。
一方、経営改革では将来のビジョンに基づいた選択と集中や事業・商品計画の立案のほか、経営陣らによる現地現物主義を再徹底する。風土改革は人事評価制度の見直し、部門をまたいだ人材のローテーションを行い、部門を越えて従業員同士がつながる仕組みを構築する。奥平社長は「風土は長年、醸成してきた経営の問題でもある。時間はかかるが、モノが言いやすい風土、コミュニケーションを互いにできる風土を作っていく」と説明した。
第三者委によると、最も古い不正は1989年から行われていた。もともと良品廉価な新車開発で業界でも定評があったダイハツ工業。その従業員が不正をせざるを得なかった組織風土は一朝一夕には変えられない。新たな経営体制で、どれだけスピーディーかつ的確に再発防止策を実行していけるか。奥平社長からバトンを受け取った新社長の井上氏ら経営陣にかかっている。
※日刊自動車新聞2024年(令和6年)2月14日号より