ダイハツ工業で主力車種の出荷再開が長引いていることを受け、系列ディーラーから2024年度の経営への影響を懸念する声が出始めている。一部車種で生産や出荷が始まっているが、23年の軽自動車の車名別販売台数で2位だった「タント」のめどは立たないまま。再開は4月以降となる可能性が高く、「このままの状況が続けば24年度の売り上げを予測できない」(西日本の販売会社トップ)と頭を抱える。各販社は23年度、中盤までの積み重ねで一定の業績を確保できそう。24年度への打撃を少しでも抑えるため、メーカーには一刻も早い新車供給の正常化が求められている。
ダイハツでは国土交通省が基準適合性を確認した車種から、生産や出荷を再開している。26日には軽自動車「ミライース」「ハイゼットカーゴ」など10車種の生産を始めた。2カ月ぶりに完成車工場が動き始めたことで、販社の中には胸をなでおろす関係者も多い。
ただ、23年のダイハツの軽でタントに次ぐ販売規模だった「ムーヴ」シリーズを構成する「ムーヴキャンバス」も、国交省の確認試験を終えていない。販社にとってボリュームを稼げるタントやムーヴ系モデルの販売に制限がかかり続ければ、本格的な巻き返しも遠のいていく。
こうした厳しい状況の中で販社は今、中古車の販売など新車以外の事業に力を入れることで収益確保を目指す動きが目立っている。こうした取り組みで「黒字の確保にめどをつけた」「(23年)12月までの貯金で乗り切れそう」とする販社もあり、23年度はある程度の業績を見込めそうだ。
しかし、新車の供給が止まったことで、足元では下取り車から中古車を確保することも難しくなりつつある。「中古車部門で商品車の不足が避けられない」とするディーラーも出ている。いずれにせよ、サービス部門を含めた販社への影響を抑えていくためには、新車の出荷再開を急ぐのが近道なのは間違いない。
ダイハツのコーポレート統括本部の井出慶太統括部長は、「現時点で納車待ちの顧客に届けることを最優先とする」方針を示している。出荷を再開した車種はまず受注残を減らし、その後、現在停止している新規受注を再開したい考え。ただ、「問題が発覚してから、商品計画については一旦止めている」ことも明らかにしており、事態打開が遅れればニューモデルの発売にも響くのは必至。全面改良の時期を迎えているムーヴに波及すれば、事業戦略を見直さざるを得ない販社も増えそうだ。
※日刊自動車新聞2024年(令和6年)2月29日号より