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自動車業界トピックス

トヨタ、GR車の販売好調 ヤリスは想定上回る4万台

元町工場は生産能力を増強

トヨタ自動車のスポーツブランド「GR」の車両販売が好調だ。世界ラリー選手権(WRC)出場車のベース車両「GRヤリス」の販売は同社の想定を上回って推移し、これまでのトヨタ車ユーザーとは異なる層からの引き合いも目立つ。トヨタは、改良型への切り替えを機に元町工場(愛知県豊田市)にある「GRファクトリー」の生産能力を増強する方針だ。供給力を増やすことで販売機会の損失を防ぎ、新たなトヨタ車ファンの獲得にもつなげる。

商品力を一段と高めた改良型「GRヤリス」

GRヤリスを生産するGRファクトリーは、ベルトコンベアを持たない「セル生産」方式を採用する少量生産ラインだ。高性能なスポーツカーに求められる剛性の高い車体や高出力エンジンの生産、高精度な部品の組み付けなどを、トヨタの全工場から集まった熟練工がほぼ手作業で行っている。

生産能力は、WRCのホモロゲーション(認証)を取得するために必要な年間2万5千台、月間ベースで約2千台だが、現在は23年4月に発売した「GRカローラ」と混流生産しており、GRヤリスの生産台数は立ち上げ時よりも減っているという。

こうした中、改良型の生産を開始する4月以降にGRファクトリーの生産能力を増強する。車体の溶接工程にロボットを導入して生産効率を高めるほか、組み立て工程の人員も従来より増やす。

GRヤリスチーフエンジニアの齋藤尚彦主査は「世界の累計販売は約4万台だが、正直そこまで売れるとは思っていなかった」と明かす。トヨタの想定と異なり、高級スポーツカーを所有する富裕層やラリー愛好家など、トヨタ車ユーザーとは異なる顧客層の購入も目立つという。

今春発売する改良型では、エンジン出力の向上に加え、空力特性や冷却性能を改善する外装デザインを採用した。ドライバーが運転に集中できるようベース車の「ヤリス」と異なる専用のコックピットを採用するなど商品力を一段と高めている。

発売から約3年半という短期間で大幅改良を加えた背景には、トヨタが掲げる「モータースポーツを起点としたもっといいクルマづくり」に加え、販売台数増の後押しによって、投資回収のタイミングが早まったことも大きいようだ。

※日刊自動車新聞2024年(令和6年)3月5日号より