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自動車業界トピックス

トヨタ系部品メーカーで労務費転嫁の動き

2024年4~9月期の価格改定要請で焦点に

労務費を含んだ価格交渉を模索する動きがトヨタ自動車系部品メーカーの間で広がっている。原材料やエネルギー価格高騰分の転嫁が進み、部品各社の業績は堅調だ。一方で労務費分の転嫁は進んでおらず、物価上昇に伴う高水準な賃上げの原資は自助努力に委ねられている。トヨタが2月中旬以降に示す2024年4~9月期の価格改定要請でも、労務費の転嫁がどこまで進むかが焦点となりそうだ。

原材料やエネルギー価格高騰分の取引価格への転嫁は進んだが…

トヨタ系部品メーカー13社の23年4~12月期の決算では、品質問題の引き当て費用を計上したデンソーを除く12社が営業増益となった。トヨタの車両生産が増えたことに加え、価格転嫁が進んだ影響も大きい。トヨタは同期の連結決算で減益要因として原材料高でマイナス3700億円を織り込んだ。

政府は23年11月「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」をまとめた。発注者側として大手企業が中小企業と価格交渉する際、受注側の労務費を考慮する必要がある。デンソーの松井靖副社長は「賃上げの影響をきちんと仕入先にお支払している」と、すでに労務費の価格転嫁を進めていることを明らかにした。部品メーカーは仕入れ先のティア2(2次部品メーカー)に対し積極的な支援に乗り出す方針を示す。

一方で、中小部品メーカーからは価格転嫁に慎重な声も上がる。東海地区のある2次部品メーカー幹部は「営業には(価格転嫁交渉の)指示を出しているが、少しナイーブなところがある。『そういうことまで言ってきた』ということで転注されることも防がないといけない」と話す。労務費の上昇分は原材料費などに比べ説明が難しいうえ、「生産性改善で吸収すべき」という意識も根強い。

業績と賃上げの好循環を生み出すには、自動車産業ピラミッドの頂点に立つ自動車メーカーのさらなる仕入先支援が求められる。トヨタと直接取引があるティア1(1次部品メーカー)がどのような指標や根拠を用いて交渉を進めていくかがポイントだ。

デンソーの松井副社長は「お客様(自動車メーカー)に理解してもらい、価格反映してもらう正の循環に変えることが重要だ」と指摘した。大豊工業の延川洋二執行役員も「賃上げムードも大きいが、合理化で吸収できる部分と、そうでない部分をどう取り扱っていくか。お客様と相談しながらだ」と語った。交渉の行方が注目される。

※日刊自動車新聞2024年(令和6年)2月9日号より