伊藤忠商事など3社連合による買収が決まったビッグモーター(和泉伸二社長、東京都多摩市)について、現在の店舗や整備工場、従業員は原則的に新会社がすべて引き継ぐ見通しであることが分かった。ただ、新会社への移行後は一部拠点の閉店など、店舗網を再編する可能性はあるという。また、かつてのビッグモーターの「売り」だった高額な歩合給や給与体系についても変わることになりそうだ。
ビッグモーターの店舗数は25日時点で248カ所、整備工場は128カ所、板金工場は13カ所ある。従業員数は2023年末の段階で約4800人だったが、現在はそれより減っているとみられる。最新の従業員数について、同社は公表していない。
3社連合は6日、現在のビッグモーターを会社分割して主要事業を承継する新会社を発足させると公表した。その直後の内部文書には、基本的に現在の店舗・工場を維持し、従業員の配置も現状にて承継となる予定だが、収益性改善などの観点から一定の店舗編成の見直しなどが行われる可能性はある、との主旨のことが書かれてある。
伊藤忠商事の岡藤正広会長CEOは一般紙や雑誌のインタビューで、雇用は守るが不良資産は引き継がない方針を打ち出していた。
ビッグモーターによると、一連の不祥事で、23年の夏時点で134カ所(現在は128カ所)あった整備工場のうち、113カ所が国土交通省から行政処分を受けた。また、39カ所の工場が「指定自動車整備事業の指定の取消」となった。指定工場の資格が取り消されると、一般的な整備作業は可能だが、少なくとも2年間は車検の業務ができない。
このような状態で、3社連合は、一部店舗や整備工場を承継しない可能性もあるとみられていた。ただ、原則すべての店舗と整備工場を新会社に承継する方向にしたのは、スピードを重視したためとみられる。ビッグモーターでは退職者も相次いでいるもよう。同社が23年末に三井住友銀行から借り入れた運転資金300億円の返済時期も迫る。店舗の選別や交渉をしていると時間が掛かることから、いったんすべてを承継することにしたとみられる。
また、内部文書では給与について、「事業承継のタイミングで給与の支給額や支給の仕組みの変更について現在検討中」とし、歩合給にも言及している。ビッグモーターはかつて、ホームページの採用コーナーで「最大で年収5千万円」と強調していた。実績に合わせた歩合給で高給を保証することで業績を伸ばしたが、数字を重視するあまり、不祥事の温床にもなっていた。経営が厳しいこともあり、歩合給の一定の見直しは避けられないとみられる。
ビッグモーターは事業の権利義務をジェイ・ケイ・エイチ(神永信吾社長、東京都新宿区)に承継すると13日に公表した。同社は再編手続きのための受け皿会社で、3社連合は新会社を、4月下旬をめどに発足させるとしている。
※日刊自動車新聞2024年(令和6年)3月29日号より