メガサプライヤーが半導体の調達体制を強化している。ボッシュのクラウス・メーダー社長は16日、2022年のオンライン年次記者会見で、半導体不足について足元では改善傾向にあるものの「23年も継続する可能性がある」との認識を示した。親会社ロバート・ボッシュグループが内製する半導体の調達を増やすとともに、半導体サプライヤーと長期契約を結んで安定調達体制を構築する。デンソーも発注方式を変更して在庫管理を徹底するなど、安定調達に向けた取り組みを強化している。
ボッシュのメーダー社長は半導体不足問題の解消時期について明確な時期を示さなかったものの、23年以降も不安定な状態が続くとの見通しを示した。車載以外も含めて半導体全体の需給がひっ迫しているのに加え「単なる供給不足だけではなく、輸送のボトルネック、税関での処理能力、そうしたことも影響している」という。
安定的な調達まで時間を要するため、親会社のロバート・ボッシュは内製する半導体の生産能力を増強する。ドイツのドレスデンとロイトリンゲンのウエハー製造工場を拡充するほか、マレーシアのペナンでは半導体テストセンターを新設する。22年に4億 ユーロ (約560億円)以上を投資する計画だ。
投資の大半はドレスデン工場の生産能力の増強で、300㍉㍍ウエハーの生産能力を引き上げ、22年から半導体チップを増産する。同工場は21年7月に稼働、自動車メーカー向け半導体チップも製造して、需要に対応している。
また、ロイトリンゲン工場では、電気自動車(EV)の航続距離の延長や充電時間の短縮を実現するSiC(炭化ケイ素)パワー半導体を昨年12月から量産。パワー半導体の需要は車両の電動化に伴って需要拡大が見込まれる。ボッシュ日本法人はロバート・ボッシュが内製する半導体を調達することで、部品の安定的な生産・供給につなげていく。
デンソーは半導体メーカーとの連携を強化し、安定調達に向けた取り組みを進めている。従来、3カ月先まで確定発注していたものを、約1年先の分まで確定注文することで、車載半導体生産の優先度を上げてもらう活動に力を入れている。
また、政府や商社など社外の専門機関とも連携し、地政学的リスクもはらむ半導体需給の見える化も進めている。同社はデジタル技術を活用して半導体在庫管理システムを構築。不足が懸念される半導体を予測して事前に対応することで、有事の際のリードタイム短縮など不測の事態にも対応できる体制を整える。
自動車生産が不安定化している要因である半導体不足の問題は長期化する見通し。自動車の電子化で、自動車1台に搭載される半導体数量は今後も増える見通し。メガサプライヤーは半導体を安定調達する独自の取り組みを展開して、自動車メーカーのニーズに対応していく。
※日刊自動車新聞2022年(令和4年)6月17日号より