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自動車業界トピックス

ユーグレナ、バイオ燃料を都内で試験販売開始

内燃機関車の救世主となるか

軽油と同価格でバイオディーゼル燃料を提供する(東瑞江サービスステーション)

ユーグレナが都内のガソリンスタンド(給油所)で、バイオディーゼル燃料の一般販売を試験的に始めた。低価格化や安定供給が課題だが、普及が進めば合成燃料とともに内燃機関車や既存の給油所が生き残るための「選択肢」になり得る。同社は3回目となる試験販売を通じ、普及に向けた社会受容性の醸成を進めて将来に備える。

自動車の燃料として活用が期待されるバイオマス(生物由来)燃料は、サトウキビなどの農作物や草木などを原料とする「バイオエタノール」と、パーム油や廃食油などを原料とする「バイオディーゼル」が代表的だ。前者はガソリン、後者は軽油に混ぜたり、代替したりする。燃焼時に排出される二酸化炭素(CO)は成長過程の光合成分と相殺され、カーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)と見なされる。

海外では国を挙げてバイオエタノール政策を進めたブラジルが先行しており、年間のガソリン消費量の約半分をバイオ燃料が占める。日本では2005年に閣議決定された「京都議定書目標達成計画」で、輸送用バイオエタノールの年間50万㌔㍑の導入を目標に掲げた。足元では年間ガソリン消費量の約1.6%にあたる83万㌔㍑のバイオエタノールを導入しており、目標値に対する進ちょくはまずまずだ。

ただ、本格的な普及に向けては、コストの壁が立ちはだかる。エタノールは大半を輸入に頼っているため、輸送費などを含んだ1㍑当たりのCIF価格(22年9月)は、ガソリンが100円を切るのに対し、燃料用のバイオETBE(ガソリン添加剤)は170円を超えた。販売コストなどを加えると価格差はさらに広がる。

バイオディーゼルに関しても、19年時点の製造コストは09年の1.2倍近くに上昇している。ユーグレナが6日から販売開始した「サステオ」は、東京都からの補助金もあり通常の軽油と同じ1㍑当たり138円で提供するが、出雲充社長は「補助がなければ300円」と明かす。

今回、提供するサステオは20%がバイオ原料で、残りの80%は化石燃料だ。燃料の脱炭素化を進めるにはバイオ比率の引き上げが必要だが「販売価格をさらに下げるには長期的に取り組む必要がある」(出雲社長)。

3回目となる試験販売は給油所2カ所で約1カ月間、実施する。供給する給油所を傘下に持つ丸紅エネルギーの本郷孝博社長も「まずはユーザーにバイオ燃料を知ってもらい、安全性を認識してもらう機会になれば」と狙いを話す。燃料の規格ができる前、給油車両が不具合を起こすなどした過去もあり、利用者の不安を払拭することも普及の条件となりそうだ。

世界中が脱炭素に向け動き始めた中、昨年出された「日米首脳共同声明」では、30年に日本のバイオエタノール需要を足元から倍増させる認識を米国と共有した。米国は今年1月、バイオ燃料の生産プロジェクトに1億㌦(約135億円)以上の財政支援を投じると公表するなど、国を挙げてバイオ燃料の開発に取り組む。

50年のカーボンニュートラル目標達成には既存の内燃機関車の脱炭素化も重要になる。国際的な開発・普及競争に遅れを取らないためにも、カーボンニュートラル燃料は官民連携が今後、さらに求められる領域になりそうだ。

 

(村田 浩子)

※日刊自動車新聞2023年(令和5年)3月7日号より