車載半導体の不足による自動車メーカーの完成車生産への影響を懸念する声が強まっている。ルネサスエレクトロニクスの車載向け半導体の主力工場である那珂工場(茨城県ひたちなか市)で火災が発生、復旧まで1カ月程度を要する見通しで、自動車メーカー各社は完成車生産への影響の確認作業に追われている。ルネサスの火災前から世界的に半導体需給がひっ迫している中、自動車生産の不安定な状態は長期化する見通しで、影響は部品メーカー、素材メーカーなどにも幅広く及びそうだ。
火災が発生した半導体の製造ラインは、車載用マイコンを主に生産しており、国内の自動車メーカーの大半に供給しているもよう。火災発生の連絡を受けてトヨタ自動車や日産自動車、スバル、マツダ、三菱自動車などの自動車メーカー各社は、半導体の供給がストップした場合の影響の確認や代替調達など、対応に追われている。
半導体はコロナ禍の影響で新車市場が縮小したことから半導体メーカー各社が車載向けの生産を縮小したが、その後、需要の急回復で受注が集中したのに加え、デジタル関連などの半導体の旺盛な需要によって不足。自動車メーカーは半導体不足で減産や生産の一時停止を余儀なくされていた。
ルネサスの真岡朋光執行役員兼オートモーティブソリューション事業本部副事業本部長は火災前、4月以降、半導体の需給は徐々に回復に向かうとの見通しを示していた。トヨタの幹部も今春から供給量が段階的に戻るとの認識だった。
半導体調達の正常化を期待していた矢先の火災発生で、車載用半導体が安定的に調達できるまでにはさらに多くの時間を要する可能性がある。自動車各社は減産や生産停止を避けるため、生産機種の入れ替えや、代替調達などの対応策に当たるが、当面、綱渡りの生産計画を強いられることになりそうだ。
※日刊自動車新聞2021年(令和3年)3月23日号より