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自動車業界トピックス

ロシア経済制裁、サプライヤー工場も一部で操業停止

駐在員の退避指示相次ぐ 欧州事業への波及懸念

ロシアへの経済制裁で、日系サプライヤーがロシア事業の対応に乗り出している。政府はロシア全土への渡航中止を勧告するとともに、在留邦人に対して出国を検討するよう要請している。これを受けてロシアに進出している駐在員に対してロシア国外に出国するよう指示するサプライヤーが相次いでいる。サプライヤーのロシア工場の操業にも一部で影響が及んでいる。さらに、物流網の混乱やエネルギー価格の高騰などによってサプライヤー各社の事業に影響が広がることが懸念されている。

ブリヂストン・ロシア工場

外務省がロシア全土の危険情報を上から2番目の「レベル3」に引き上げ、渡航中止を勧告。サプライヤー各社は自動車メーカーの工場の生産停止や経済制裁で混乱するロシアにある工場への支援に人を送れなくなった。政府が在留邦人に対して出国するよう促していることから、サプライヤー各社もロシア駐在員の安全確保に向けて退避を指示しはじめた。

横浜ゴムは、日本への一時帰国や、ドバイの出張所に一時退避させることを決定、来週にもロシアからの出国が完了する予定。ブリヂストンは、駐在員と家族が一時帰国を希望する場合の渡航費用を会社が負担する制度を設けた。日本特殊陶業は現地駐在員1人を近くロシア国外に退避させる方針。

情勢をしばらく見守ってから対応を決めるサプライヤーもある。トヨタ自動車がロシアにいる駐在員全員を帰国させることを決めたものの、デンソーとトヨタ紡織は8日午前の段階で、駐在員の出国を検討中としている。

ロシアに対する経済制裁の影響などから、ロシア国内にある自動車生産拠点の稼働にも影響が及んでいるものの、ブリヂストンと横浜ゴムのロシア工場は、8日時点で通常稼働している。ただ、物流網の混乱などで原材料が調達できなくなるとタイヤ生産への影響は避けられないという。

ロシアで自動車用ガラス製品などを製造しているAGCは、ほぼロシア国内で販売しているため、7日時点で経済制裁の影響を受けていないとしている。AGCの21年度のロシアの売上高は3980億円で、欧州事業に占める比率は10%弱、営業利益が375億円。自動車用ガラスなどの製造工程の燃料に天然ガスを使用しているため、今後も天然ガス価格の高騰が続いた場合、収益にインパクトを受ける見通し。

ルネサスエレクトロニクスの柴田英利社長は3日のアナリスト向け説明会で、ウクライナにある研究開発拠点について「現時点で大きな影響はでていない。顧客サイドの生産への影響は注意深く見守っていきたい」としている。

トヨタは4日から当面の間、サンクトペテルブルクの完成車工場を停止しており、同じ敷地内にシート製造拠点を持つトヨタ紡織も生産を停止している。このほか、ロシアに進出している日系の熱交換器メーカーは、現地の自動車メーカーが生産調整する可能性があることから、減産を検討中としている。

一方、経済制裁による物流の混乱やエネルギー価格の高騰が、サプライヤー各社の事業に影響が広がることが懸念される。武蔵精密工業の大塚浩史社長・最高経営責任者は、ウクライナ危機による直接的な影響は現時点で受けていないものの「欧州事業で材料調達などのサプライチェーンへの影響を確認している」という。

※日刊自動車新聞2022年(令和4年)3月9日号より