整備業界で一級自動車整備士に対する関心が高まっている。日本自動車整備振興会連合会(日整連、竹林武一会長)がまとめた令和元年度の一級自動車整備士試験の合格者数は、前年対比61.4%増の1388人だった。累計の合格者数も8.8%増の1万7148人となり、着実に増えている。一方で、今年4月の道路運送車両法の改正で自動運転車の点検、整備を見据えた「特定整備」制度がスタートした。これに伴い、一級自動車整備士に対するニーズが高まっており、今後は試験への申請者数や合格率が向上する可能性は高い。
(詳細は15日付一級自動車整備士特集に掲載します)
一級自動車整備士試験は年1回で通常、毎年3月に筆記、5月に口述、8月に実技の各試験を実施する。今年は新型コロナウイルス感染拡大を受け、5月の口述試験が8月に延期になり、実技を今秋に実施する。今年の一級自動車整備士試験の合格者はその後に発表になる見通し。
試験の合格者数と実際の資格保有者数は届出の関係で一致しない。それでも、毎年の合格者数は1000人前後で推移し、今後も資格取得者数の拡大が見込める。
一級自動車整備士は2003年に創設された。道路運送車両法上の規定は1951年からあったが、技能検定の実施時期は「国土交通大臣が必要と認めるとき」としか定められておらず、電子技術の高度化や接客能力の必要性などを踏まえ、創設された経緯がある。
その中で、4月の道路運送車両法の改正で導入された特定整備では、監視用カメラやセンサーのエーミング(機能調整)作業を行うための新たな認証資格「電子制御装置整備」が導入された。電子制御装置整備に対応できる能力を持つ整備主任者を選任する必要がある。一級自動車整備士のほか、資格取得講習を修了した二級自動車整備士、自動車電気装置整備士または自動車車体整備士が整備主任者となれる。
これにより、一級自動車整備士により注目が集まっている。全国自動車大学校・整備専門学校協会(JAMCA)の中川裕之会長は「特定整備で追い風が吹いているが、まだ一級の地位向上には道半ば。スマートモビリティを支えるメカニックとしての認識が定着すれば、より脚光を集めるのではないか」と話している。
※日刊自動車新聞2020年(令和2年)7月9日号より