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自動車業界トピックス

世界に誇れる救済制度「自賠責保険」

財務省が自賠責運用益流用分の返済を渋っているため、交通事故被害者は気が気ではなかった(千葉の療護センター)

自賠責保険制度は、自賠法に基づき1955年にできた。基本的に公道を走る全車に加入が義務付けられており「強制保険」とも呼ばれる。自賠責に入らず車両を走らせた場合、1年以下の懲役または50万円以下の罰金、さらに免許停止(違反点数6点)処分になる。

保険料はドライバーには負担だが、クルマ社会に交通事故はつきもの。相手が保険に入っていなかったり、逃げたりしてしまった場合、国が保険金を立て替え払いする仕組みもあり、福田教授が言うとおり、世界に誇れる制度と言える。

保険料は「ノーロス・ノープロフィットの原則」に基づき、赤字にも黒字もならないよう、車種ごとの事故発生率や保険金の支払い額などを基に定期的に見直される。このため、保障の範囲は「対人のみ」と必要最低限だ

「一般会計から自動車安全特別会計への繰り戻し」とは、財務省が赤字国債の発行を回避しようと、94年度から2年にわたり、1兆円あまりの運用益を一般会計に流用したにも関わらず、全額を返済(繰り戻し)していない問題だ。実は、この運用益は事故被害者の救済にも充てられている。例えば、交通事故による重度の後遺障害で寝たきりになった人を受け入れ、治療やリハビリを施す施設が全国にある。この運営費も税金ではなく、自賠責保険料の積立金で賄われている。重度後遺障害者の両親などが亡くなった場合でもグループホームに入れるようにしたり、訪問系サービスを充実させたりと、事故被害者支援の必要性はなお高い。

2022年の自賠法・特会法改正で、被害者救済などに充てられる「賦課金」が導入され、被害者救済事業の安定化には道筋がどうにかついた。ただ、財務省の返済ペースは依然として鈍い。補正予算やODA(政府開発援助)などには兆円単位の支出をいとわない割に、わずか5千億円ほどの借金返済を渋る財務省の姿勢は交通事故被害者にとっていかにも奇異に映る。

※日刊自動車新聞2024年(令和6年)1月26日号より