2020年の世界主要市場の販売台数がまとまった。コロナ禍の影響でいずれも19年実績を下回ったものの、中国が前年比1.9%減にとどめた一方で新興国では半減した国もあるなど、地域によって大きく差が開いた。足元では回復傾向にあるが、生産台数の増加などを背景に半導体をはじめとする部品の供給懸念も出ているほか、新型コロナウイルスの変異種も世界的に広がり始めており、21年の見通しは不透明だ。
20年の中国、米国、日本、欧州主要18カ国の新車販売台数(欧州は乗用車のみ)は、19年と比べて11.5%減の約5517万台だった。世界の7割の需要を占める4地域で720万台の需要が蒸発した。
その中で健闘したのは中国で、4月にプラスに転じた後、12月まで9カ月連続で前年を上回った。特に日本の自動車メーカーは好調で、トヨタ自動車やホンダは過去最高を記録。あるサプライヤーの首脳は「需要の回復に加えて、経済停滞した2月の挽回生産もあり、20年は13カ月分の仕事をした」と、自動車メーカーから強い増産要請があったことを振り返る。
一方、日本は前年比11.5%、米国は同14.7%、欧州が同24.5%の減少となった。新型コロナが世界に広がった昨春時点の「想定のシナリオを上回る回復だった」(自動車メーカー幹部)ことで需要が戻り、各地域は9月には前年を上回ったが、欧州では10月から3カ月連続マイナスとなり感染の再拡大などで足踏みが続く。
21年は中国汽車工業協会が同4%増の2600万台超、全米自動車ディーラー協会が同7%増の1550万台と、回復見通しを示す。ただ、昨年終盤以降、半導体の不足や港湾の混乱が自動車生産に影響を与え始めており、「サプライチェーンの混乱が懸念される」(全米自動車ディーラー協会)との不確定要素は多い。
また、新興国の市場縮小も深刻だ。20年の新興国の新車販売台数は、ブラジルが同26.2%減の約205万8千台、南アフリカが同29.2%減の約38万台となったほか、インドネシアは同48.5%減の約53万2千台と大きく落ち込んだ。インドの4~12月の販売台数は同21.6%減の213万6千台だった。世界新車市場は20年と比べると回復に向かうとみられるものの、新型コロナ発生前の水準に戻るにはまだ時間がかかりそうだ。