中古車市場が活気を取り戻しつつある。7月の中古車登録・届け出台数(前年同月比2.2%増の51万2214台)は3カ月連続のプラスで、足元の復調ぶりを裏付ける。半導体などの部品不足による新車供給の遅れが響き、長らく中古車が足りない状況が続いてきた。2023年に入って新車の納期の改善が進み、下取り車が例年並みに戻りつつあるため、中古車市場を悩ませていた〝タマ不足〟がようやく解消に向かっているのが主たる要因だ。ただ、この効果がいまだ波及していない中古車事業者があり、今の回復基調は力強さに欠けるのも事実。当面は、楽観視はできなさそうだ。
7月の中古車販売は、登録車と軽自動車がともにプラスとなった。登録車と軽が両輪で市場の拡大を支えており、逆風が続いていた中古車の販売現場で胸をなでおろす事業者も少なくない。このまま市場回復が進むことを望む事業者が多いが、不透明な要素も残っている。
その一つが、ロシアだ。8月9日には日本政府が、ロシアへの中古車の輸出規制の対象を拡大した。一方のロシア国内でも、入管税の引き上げが実施された。こうした事態を捉え、日本では駆け込みで輸出するため、7月の輸出抹消登録が前年同月に比べて5割も伸びた。当然、8月以降は反動減が見込まれる。この動きがどう出るかで、国内の中古車流通にも影響が及ぶとみられる。
もう一つが、自動車保険金の不正請求問題に揺れるビッグモーター(和泉伸二社長、東京都港区)だ。板金塗装工場において、顧客の車両をわざと傷つけるなどした行為は、一般客にも衝撃をもって受け止められた。中古車販売でもさまざまな疑惑が出ている。同社だけにとどまらず、中古車業界に不安な目を向けるユーザーが増えていけば、せっかくの市場回復の流れに水を差す恐れもある。中古車業界の信頼悪化につなげないためにも、同社の問題の真相究明を急ぐ必要がありそうだ。
(佐藤 元彦)
※日刊自動車新聞2023年(令和5年)8月15日号より