中小企業庁は、中小企業の知的財産保護に向けた取り組みを強化する。知財保護の観点で問題がある取引に関して行政機関などに助言を行う新組織を設立し、取引の適正化につなげる。自動車を含む製造業でも発注事業者を通じた中小企業の知財流出などが発生しており、ものづくり産業の根幹を揺るがす課題になっている。「外部の目」を増やすことで、知財保護と取引の健全化に取り組む。
中小企業庁内に、新たに「知的財産取引アドバイザリーボード」を設置。弁護士など外部の知財専門家で構成する。中小企業庁などに対して、不適切な事案に関する法律上のアドバイスなどを行う。知財取引に関する専門的な知見を取り入れることで、発注企業への指導や助言などをより詳細に行えるようにする。
今年4月には「下請けGメン」の中に知財を専門とする「知財Gメン」を置くなど、同庁は中小企業の知財保護施策を拡充している。中小企業は大企業と比べ、知財の専門知識を持つ人材が社内に少ないケースが多く、商取引の中で不利益が発生する事案が起きているためだ。
昨年4~12月に同庁が下請け事業者を対象に実施したヒアリング調査によると、知財に関する事案673件のうち、502件で問題があった。ある自動車部品メーカーは、品質工程管理チャート図や仕入れ先リストを発注事業者に提出しないと取引を打ち切るといった知財提供の強制を強いられたほか、機械器具メーカーからは、金型図面が発注事業者の不手際で他社にわたってしまうといった知財流出の報告が挙がっているという。
自動車産業では、関連企業の8~9割は中小企業が占める。ものづくりを支える中小企業の知財を保護することは、日本のものづくり産業を守ることにもつながる。新たな組織の取り組みを通じて、大企業、中小企業ともに知財への理解の深化を図りたい考えだ。
※日刊自動車新聞2022年(令和4年)6月14日号より