帝国データバンク(後藤信夫社長、東京都港区)は「事業継続計画(BCP)に対する企業の意識調査」の結果を公表した。同社は「ポストコロナに向けて経済活動が加速していく中、BCP策定への取り組みに対する意識や優先順位が下がる傾向がある」としている。
BCPは、自然災害などの緊急時に事業活動が停止する被害を最小限に抑えるため、緊急事態への対応手順や復旧体制をあらかじめ決めておくもの。大企業では震災を教訓にサプライチェーン(供給網)レベルでの対応が進んでいるが、中小・零細(小規模)企業の取り組みは遅れている。政府は指針やガイドブックを公表するなどしてBCPの普及に取り組んでいる。帝国データバンクは全国2万7930社を対象に5月に調査し、1万1420社から有効回答を得た。
BCPの策定状況について、「策定している」と回答した企業は前年比0.7㌽増の18.4%で、6年連続で増加している。「現在、策定中」の企業は同0.1㌽減の7.5%、「策定を検討している」と答えた企業は同1.9㌽減の22.7%だった。これらを合わせた「策定意向あり」の企業の比率は同1.3㌽減の48.6%で、3年連続で5割を下回った。
企業規模別のBCP策定率は、大企業が同1.8㌽増の35.5%、中小企業が同0.6㌽増の15.3%だった。大企業は2016年から8.0㌽増加したが、中小企業は3.0㌽の上昇にとどまった。
「策定意向あり」の企業が想定するリスクでは、地震や風水害、噴火などの「自然災害」が最多で71.8%となった。次いで「設備の故障」(41.6%)、「感染症」(40.4%)、「情報セキュリティー上のリスク」(38.1%)、「物流(サプライチェーン)の混乱」(34.7%)と続いた。「感染症」を想定リスクとして回答した企業は、前年比で13.1㌽低下した。新型コロナウイルスの感染症法上の分類が「5類」に移行したことが影響したようだ。他方、地震の頻発や首都直下、南海トラフなど大地震の発生リスクを踏まえ、「取引先の被災」が同5.3㌽、「物流(サプライチェーン)の混乱」も同4.3㌽、それぞれ上昇した。
また、事業が中断するリスクへの備えの実施・検討内容では「従業員の安否確認手段の整備」が68.2%で最も多かった。このほか「情報システムのバックアップ」(57.1%)や「緊急時の指揮・命令系統の構築」(41.0%)などの回答も目立った。
一方でBCPを「策定していない」と回答した企業は、43.0%にのぼった。このうち42.0%が理由として「策定に必要なスキル・ノウハウがない」と答えた。「策定する人材を確保できない」(30.8%)や「策定する時間を確保できない」(26.8%)、「書類作りで終わってしまい、実践的に使える計画にすることが難しい」(26.3%)、「自社のみ策定しても効果が期待できない」(23.8%)といった回答もあった。
帝国データバンクは「BCPの準備を怠ることで経済活動に与えるマイナスの影響は大きく、企業、行政が連携して対策を講じていくことが求められる」とした。
※日刊自動車新聞2023年(令和5年)7月1日号より