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自動車業界トピックス

二輪車や鉄道でも進む水素エンジン開発、2030年ごろの実用化も視野

四輪車だけでなく、二輪車や鉄道など、さまざまな乗り物で水素エンジンの研究開発が活発になっている。ヤマハ発動機は、2030年代にまずは船外機から実装していく。カワサキモータースは、昨年末に水素エンジンを搭載した試作車を公開し、走行テストに入る。JR東海も鉄道車両で水素エンジンの活用を検討する。水素を活用する燃料電池(FC)に続く新たな動力源として注目が集まる。

船外機の開発、製造を手がけるヤマハ発は、30年頃までには水素エンジンの基礎技術を確立させ、まず船外機から実用化する方針を公表済みだ。二輪などに比べ、水素タンクを組み込みやすいことが主な理由だ。二輪については、搭載スペースに制限があるため貯蔵タンクの小型化が求められる。

 カワサキも二輪向けの水素エンジンを研究する。昨年末の「グループビジョン2030進捗(しんちょく)報告会」で水素エンジンを搭載した二輪を公開した。大型二輪「ニンジャ H2 SX」をベースにしており、車体後部にはトヨタ自動車の燃料電池車(FCV)「ミライ」の水素タンクを積む。今年から試験走行に入り、性能データなどを集めていく。

JR東海は、鉄道車両への搭載を想定し、水素エンジンの研究開発を手がけるスタートアップのiLabo(アイラボ、太田修裕社長、東京都中央区)とともに開発に取り組んでいる。同社はトヨタのFC(燃料電池)スタックを用いた開発も行っているが、水素エンジンは非電化路線などでの活用を想定している。24年度以降に模擬走行試験を同社研究施設内で行い、登坂能力などのデータを集める。

四輪では、トヨタが市販を見据えオーストラリアで実証中だ。昨年11月のスーパー耐久シリーズの最終戦が行われた富士スピードウェイ(静岡県小山町)では実車も公開した。ガズーレーシングカンパニーの高橋智也プレジデントは「実証実験が始まった今、(開発状況は)7合目に差し掛かっている」と語った。

ヤマハ発の日髙祥博社長は「エンジンを残そうと思うと、とにかく水素だ」と、脱炭素に向けて既存のエンジン技術を残していく手段として水素が切り札になると期待する。

一方で、日髙社長は「水素の需要を増やしていくことが重要だ」とも話す。水素を大量に消費する水素発電に期待がかかるが、モビリティの領域でも四輪だけでなく、二輪や鉄道、船などで活用が広がれば水素需要の増加にもつながる。燃料供給面で課題を残しつつも、水素エンジン開発は着実に進んでいる。(織部 泰)

※日刊自動車新聞2024年(令和6年)2月2日号より