整備業界は変革の進む自動車技術への対応とともに、時代の変化に見合ったES(従業員満足)、CS(顧客満足)の実現というソフト面の取り組みが重要テーマになった。数値による絶対的な指標は作りにくいものの、整備士が仕事にやりがいを感じ、業務を効率的にこなせる設備、環境を整えると「作業品質が向上し顧客満足につながることが次第に分かってきた」という声が多数聞かれる。整備機器メーカー各社は、こうしたESとCSのつながりを意識しながら、最新の整備機器を活用した工場づくりを提案した。
メカニックの平均年齢は右肩上がりとなっており、このところ年間平均で0.3歳ずつ上昇している。現在の平均年齢はディーラーが35.3歳、専業が50.8歳(2018年度版整備白書)。高齢化が進むほど、作業時の身体負担の軽減がES向上に欠かせなくなることは明らかだ。
こうした中、働き方改革に代表される社会の動きに合わせて、工場で労働環境改善が活発になっている。作業効率の向上やけが防止も改善テーマに含まれている。自動車大学校・整備専門学校を含め、整備業界全体で人材開拓に取り組む女性整備士の仕事のやりやすさを意識して、整備機器やデザイン性の高い工具などの導入に投資する企業も少なくない。
今回のオートサービスショーは、このようなニーズの“かゆいところに手が届く”さまざまな商品が出展された。アルティアのブースでは、関連商品を多数紹介。その中でもブレイン(大倉博則社長、大阪市港区)が熱中症対策に向けて新発売した「空調エアコン服」が注目を集めた。
上着に空調ファンを取り付けた“完成品”は、大型車整備などで着用するハーネスの上に被せて着用できる。また、自前の服に取り付けたいというニーズを考慮して、ファンなどを単体で販売する。「作業環境に合わせて完成品、パーツ単体を選べるようにして導入しやすくした」(担当者)という。
その他、体幹の動きをセンサーで読み込み腰部の力をアシストし負担を減らすパワードウエア「ATOUN MODEL Y」や「体幹筋サポーター」なども紹介した。
その他、CS向上に向けた洗車機器や“車内美装”に関する商品の提案が多数みられた。バンザイのブースは、BTO(藤原正典社長、大阪市淀川区)が革シートにデニム地の衣服などで座った際の色移りを防止する「レザーシールF」や、布地を洗浄できる「ウォッシュアダプターセット」を新ラインアップとして紹介した。同社は洗車クリーナーをひろく取り扱っており、「CS向上はもちろんだが、近年は『人材不足』をテーマに商品開発を進めている。性能を維持しつつ作業時間が短縮できることや、同じ作業でも身体的なダメージを抑えることが重要」(関係者)と話し、メカニックの洗車、車内清掃などの作業負担を抑える工夫を提供し、CS向上にもつなげていくことを支援したいとした。
ES・CSの向上では、顧客との信頼関係の構築、メカニックの長期の継続勤務、そして若い人材の獲得というさまざまな課題の解決が必須。課題解決では、労働環境の改善が優先度の高い取り組みといえる。その実現が整備業界のイメーアップを高め、さらなる成長の糧となる。
※日刊自動車新聞2019年(令和元年)5月25日号より