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自動車業界トピックス

公取委の「EV充電サービスに関する実態調査報告書」

機器の相互利用へ関係者が議論する場を 経産省へ提言

ユーザーが複数の充電サービスを利用できる環境の整備が望ましいとした

公正取引委員会は、自治体と電気自動車(EV)充電サービス事業者を対象に実施した「EV充電サービスに関する実態調査報告書」をまとめた。競争政策の観点から、自治体には複数の事業者が応札できる公募の実施と、維持費を踏まえた利用料金の設定が望ましいと指摘した。EVユーザーが複数の充電サービスを利用できる相互利用に向けても、関係者間で議論する場を設けるよう、所管の経済産業省に提言した。

■複数から選ぶことが競争上望ましい

自治体がEV充電器を設置する際、入札やプロポーザル方式(企画競争入札)を導入した事例や、今後の検討に占める割合が20%台にとどめることが調査で明らかになった。無償で設置できる点が事業者選択の決め手となったようだ。

今後、EV充電器の代替や公道設置などの積極的に設備投資を検討している自治体は多い。EV充電サービス関係事業者が増えたことも背景に、公取委は価格以外の要素も考慮して公募条件を決め、複数の事業者から選ぶことが競争政策上、望ましいとした。

自治体が利用料金を設定しているEV充電器、合わせて706口(充電口ベース)のうち、8割近くの556口が無料またはランニングコストを賄えない料金設定で一般開放されている。調査によると「EVの普及を促進するため」との回答が多かった。EV充電サービス事業者からは「利用が見込めるところに自治体が無料開放を行うことは民業圧迫という観点から望ましくない」「サービスが成り立たない」などの声が寄せられている。

公取委は「EV普及促進政策のため安価な料金設定とすることは、一定の合理性が認められる」とする。とくに需要が少なく、事業者による設置が期待できない場所で自治体が充電設備を無料開放することは問題ないとの見解も示した。一方で「需要がある程度、見込まれる場所で民間事業者がEV充電サービスを提供している場合、自治体は採算を踏まえた上でEV充電器の利用料金を設定することが望ましい」と指摘した。

■システムの相互連携を図ること

EVユーザーの利便性向上や充電器の稼働率を高める狙いから、EV充電サービス事業者間の連携も求めた。具体的には、連携先の事業者のEV充電器を自社の充電器と同様の条件で利用できるようにシステムの相互連携を図ることを挙げた。稼働率が高まれば採算も改善し、補助金なしでは事業の継続が困難なケースもあるな現状を打破することが期待できるとしている。

公取委は、相互利用の実現に向けた一手として、EV充電に関する標準プロトコル(計算手順)「OCPI(オープン・チャージ・ポイント・インターフェース)」の活用を挙げた。ただ、相互利用を行うに際しては、他のEV充電サービス事業者との交渉の中で「清算条件の交渉が最も大きな論点になる」など、技術的要件も含め、事業者間での調整が必要となってくるとも指摘。こうした観点からも、相互利用のあり方について「関係者を交えて議論を進めてほしい」と経産省に提言した。

※日刊自動車新聞2024年(令和6年)6月3日号より