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自動車業界トピックス

出張整備、作業の安全確保できるか 人材不足緩和に寄与する一方で事故や騒音など社会問題にも

「出張整備」に関する国への規制緩和要望をめぐり、国土交通省は「確実に作業を完了させられるのか、整備士の安全を事業場のように保つことができるかの検証が必要だ」(自動車局整備課)との見解を示した。出張整備自体のニーズは高まりつつあり、整備士不足の緩和につながる可能性もある。ただ、特に屋外での作業は、思わぬ事故や近隣からの苦情など社会問題につながりかねない。国交省は「まずは、それぞれの事業者の声を聞いていきたい」としている。

原動機、制動装置などの「特定整備」は屋外で行えないが…

この規制緩和は、出張整備を手がけるSeibii(セイビー、佐川悠代表取締役CEO、東京都港区)や整備士の養成施設らでつくる「出張自動車整備推進協会」(出整協、佐川悠会長)が求めているもの。自動車の点検や整備のうち、原動機や制動装置などの重要な「特定整備」は、事業場ごとに国の要件を満たして認証を取得する必要がある。整備士でも、認証工場以外では特定整備を行うことができない。

出整協は、機械工具の小型化などを背景に①ブレーキパッドの交換②オルタネーター(発電機)の交換③スターターモーターの交換―などを認証工場以外でもできるよう求めている。工場に出向かず点検や整備を済ませたり、オンライン販売で購入した部品を取り付けるニーズに対応するためだ。法定点検率の向上や整備士不足の緩和にもつながると出整協はみている。

一方、既存の整備事業者からは「事業場にひもづく認証制度がある中で、機械工具の小型化などを理由に屋外で分解整備を実施するという考え方には賛同できない」との声があがる。このほかにも、「フリーランスの作業者が出張で手に負えなくなり、整備を放棄したらどうするのか」「周囲への環境や騒音などの影響を考えているのか」「規制が緩和されたとしても、事業場という受け皿を持つ既存の整備工場が請け負えば良いのではないか」などの意見がある。

国交省は、検討の前提として「ブレーキなど安全上重要な装置の整備は、必要な設備を備えた認証工場で作業することが義務となる」「認証制度は整備士の安全を確保する上でも重要だ」とした上で、要望側と慎重派のそれぞれから意見を聞き、規制緩和の是非を判断する構えだ。

※日刊自動車新聞2022年(令和4年)12月21日号より