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自動車業界トピックス

厳しい年度末商戦、新車長納期化解消のめど立たず

来年度に向けた種まきに力

サプライチェーンの混乱による納車遅れが新車の最大需要期である年度末商戦に影響を与えている。3月は例年、月半ばまで激しい受注獲得競争が展開されるが、今年は半導体などの部品不足による自動車減産の影響で、新車の納車が遅れており、受注を獲得しても年度内に納車できるモデルが、ほぼなくなった。昨年秋ごろから自動車生産は正常化に向かう兆しがあったものの、想定通りに生産レベルは回復していない。納期が長引く中、新車ディーラー各社は2022年度を見据えて早期の代替提案など〝青田買い〟に動き始めた。

3月は例年、ディーラーでは激しい受注獲得競争が展開されるが…

「売るクルマがなくなった。この決算期をどう乗り切ればいいのか」―。東日本のスズキディーラー営業担当幹部は頭を抱える。スズキでは主力モデルの大半の納期が3カ月程度と長期化しており、正常化する兆しは見えない状況が続く。登録車を生産する相良工場(静岡県牧之原市)は3月も稼働を一時停止する。

納期が長期化しているのはスズキに限らない。西日本のトヨタ自動車系の販社役員は「納期が延びたことで受注残が2割ほど増えた」と明かす。日産自動車系の販社でも「ノートオーラ」の納期が3カ月程度、軽自動車が4カ月程度と、「改善していない」(北日本の日産系ディーラー営業担当)という。

ホンダは、人気の「ヴェゼル」が大きく影響を受けている。系列ディーラーには4日までに納期がさらに長期化する見通しを伝えた。西日本のホンダ系販社の首脳によると「8月に納車される予定だった車が12月に伸びた」という。今春発売予定で、先行予約の受付を開始した新型「ステップワゴン」もすでに納車まで5カ月程度かかる見通しだ。

納車遅れが解消するめどの立たないモデルについては、受注を停止する動きもある。ホンダは、ヴェゼルの上級グレード「PLaY」の受注を昨年10月以降、停止している。トヨタも新型「ノア/ヴォクシー」で一部のオプションの注文を取り止めている。

ディーラー各社の多くが3月期決算で、本来は新車の最大需要期ながら、販売現場の前線では新車のタマが切れつつある中、盛り上がりに欠いた状態が続く。販売店の一部は、早くも22年度に目を向けている。通常、車検到来の3カ月前に顧客に新車への代替を提案していた販売会社は「10カ月前に前倒しして提案を進めている」という。

部品不足で生産したくても生産できないことで納期が長期化していることから、顧客はある程度、理解してくれている。ただ、納期の遅延が繰り返されれば正常化への見通しが続いているだけに「いいかげんにしてほしいと顧客から愛想をつかされる」と懸念する声は多い。世界的な半導体不足が解消するのは23年以降との見方も強まる中、ディーラー各社は顧客をつなぎ止め、売るモデルが限られる中で、どう収益を確保していくのかを問われることになる。

※日刊自動車新聞2022年(令和4年)3月8日号より