2日から3日にかけて太平洋側を進んだ台風2号や梅雨前線の影響によって生じた大雨は、自動車の流通業界にも被害をもたらした。オートバックスセブンによると、埼玉県内の店舗で浸水被害が発生。また、東海地方の整備事業者では工場が浸水し、車検作業ができない事態に追い込まれている。自治体の避難指示の発令を受け、業務時間を繰り上げる措置をとった流通関連の事業者もあった。関連団体では現在、加盟事業者などへの調査に乗り出しており、被害実態の把握を急ぐ考えだ。
オートバックス越谷店(埼玉県越谷市)では、2日夜から翌朝にかけて発生した記録的な大雨により、店舗や整備工場が浸水した。車両用リフトが1台停止したほか、店舗内に置いていた紙製の什器(じゅうき)が破損するなどの被害を受けた。
静岡県沼津市の沼津中央自動車(今野秀明社長)も整備工場が水に漬かった。ブレーキテスターなどの整備機器が被害を受け、車検作業ができなくなっている。今野社長は「何とか数日で再開したいが、1週間くらいかかるかもしれない」と、頭を抱えている。雨は2日の午後4時ごろから同10時ごろにかけて強く降ったといい、社員は深夜まで帰宅できなかった。過去にも大雨で被害を受けたことはあったが、「ここまでひどいのは初めて」(今野社長)という。
軽自動車検査協会(軽検協、清谷伸吾理事長)の東京主管事務所練馬支所(東京都板橋区)でも待合所に浸水被害が発生したものの、検査業務には影響が出なかった。
大雨を受けて、終業時間を繰り上げる動きも目立った。軽検協の愛知主管事務所三河支所(愛知県豊田市)は、2日午後に同市が発令した避難指示を受け、通常午後4時までの業務時間を午後2時30分までに短縮した。翌営業日の5日朝には通常通りに業務を再開したが、終了時間の繰り上げで影響があった検査車両に対しては、自動車検査証(車検証)の有効期間を同日まで延長する対応をとった。
また、静岡県藤枝市にある整備事業者も2日の15時に、業務を休止した。ユーザーや職員の安全確保のため、こうした措置に踏み切った事業者や団体は一定数あるものと想定される。
各業界団体は現在、状況の把握を急いでいる。日本自動車整備振興会連合会(日整連、竹林武一会長)は5日、全国の会員事業者の状況をまとめるよう各都道府県の整備振興会に指示を出した。日本自動車販売協会連合会(自販連、金子直幹会長)や全国軽自動車協会連合会(全軽自協、赤間俊一会長)も情報収集しているが、5日午前までに会員の被害報告は届いていない。日本自動車リサイクル機構(JAERA、酒井康雄代表理事)やNGP日本自動車リサイクル事業協同組合(小林信夫理事長)も同様の状況だ。
消防庁の発表によると、5日午前8時30分時点で15府県5142棟の建物で被害があったという。人的被害は1県で死者1人、2県で行方不明が3人。負傷者数は11都県46人となっている。
※日刊自動車新聞2023年(令和5年)6月6日号より