ガソリンスタンド(給油所)事業者で組織する全国石油商業組合連合会(全石連)の森洋会長は、通常総会後に記者会見を開いた。二酸化炭素と水素で作り出す合成燃料の周知活動について「日本自動車工業会を含め、関連の団体と手を取り進めていく」とし、自動車と石油業界が連携していく考えを示した。全石連では合成燃料の普及に力を入れていく方針だが、「石油の製販だけでは成し遂げられない」として自動車業界に強く協力を呼び掛けていく計画だ。
合成燃料は給油所のタンクなど既存設備をそのまま活用できることから、石油業界から普及への期待が高まっている。現在、エネオスなどが実用化に向けた開発を進めており、2040年の商用化を目指している。森会長は、現在の技術では合成燃料の価格が1㍑当たり700円程度であることを指摘。技術開発を進める石油元売り企業に向けて「200円を切るような形にもっていってほしい」と、ガソリンに近い価格の実現を訴えた。
全石連では、「液体合成燃料周知活動」を新たな事業として展開することも決定した。新事業を担当する佐藤義信副会長(SS経営革新・次世代部会長)は、「地震など災害時には持ち運びに便利な液体燃料が欠かせない。国民の生命、財産を守るためにも液体燃料は必要不可欠」とし、これまで手薄だった消費者向けのPR活動に力を入れる考えを明らかにした。今後、全石連が独自制作したポスターを全国の会員事業所で掲げるなど、給油所利用者に合成燃料の存在を周知する。
また、総会では役員改選が行われ、森会長の留任が決まった。4期目の抱負については「小規模事業者の視点に立つ姿勢に変わりはない」と強調。「カーボンニュートラル(温室効果ガス実質排出ゼロ)に向けて世の中は大きく変化しつつある」とした上で、「脱炭素社会の中で給油所の在り方を考えていきたい」と、全国約2万9千拠点ある給油所網の維持を目指していく考えを明らかにした。
※日刊自動車新聞2022年(令和4年)6月14日号より