中国製の小型電気自動車(EV)の商機が日本でジワリと広がってきた。佐川急便、SBSホールディングスなど物流企業のほか、物流ベンチャーのウィルポート(藤原康則社長、東京都中央区)が中国の上汽通用五菱汽車などからEVを調達するため、窓口であるアパテックモーターズ(孫峰社長、東京都品川区)と協議に入った。ウィルポートは小商圏に特化した「ラストワンマイル物流」向けの仲介システムが強み。小口配送用で中国製EVはダイハツ工業など日本勢のEVと競合するのか、それともすみ分けるのか注目される。
アパテックは上汽通用五菱汽車から日本でのマーケティング業務を受託している。両社が合意すればアパテックを窓口に安価なEVを調達し、ウィルポートの仲介システムを利用する小規模な配送事業者にリースなどで提供する考えだ。調達するEVの仕様は明らかになっていないが、アパテックと関係のある上汽通用五菱製をはじめとする中国製の低価格EVとみられる。
ウィルポートは、荷物やドライバー、荷主を一元管理するシステムを手がけるベンチャーだ。ドライバー不足が深刻化する中で、地域の配送事業者と配送事案をマッチングするシステムを持つ。セイノーホールディングスとも組むほか、通信機能を備えた宅配ボックスを扱うなど、ラストワンマイル物流を一括して手がけている。今後は配送事業者向けに車両もリースやサブスクリプション(定額利用)サービスで提供する。2027年までに3万台以上を調達する意向で、この一環としてアパテックと組む。
小型EVは、ラストワンマイルの物流や旅客向けとして注目されつつある。ASF(飯塚裕恭社長、東京都港区)は佐川急便と軽商用EVを共同開発し、来春の納入を目指している。京都のフォロフライ(小間裕康CEO、京都市左京区)は物流大手のSBSホールディングスから軽商用EVを受注した。同社はファブレス企業で製造は中国企業に委託する。ウィルポートと協議に入ったアパテックも、こうした需要に期待する。
日本勢も対応を急ぐ。三菱自動車は、軽商用EV「ミニキャブ・ミーブ」の販売を今月から再開した。ホンダは24年、ダイハツとスズキは25年までに軽商用EVを発売する計画だ。
日本勢のEVと中国製EVとでは価格や仕様が大きく異なる。用途などですみ分けが進むのか、それとも優勝劣敗が明確になるのか注目されそうだ。
※日刊自動車新聞2022年(令和4年)11月11日号より