国土交通省は、公共交通網の維持が困難な過疎地域における「ラストワンマイル・モビリティ」の環境整備に乗り出す。20日に検討会を設置し、5月下旬に中間取りまとめを公表する予定だ。検討結果は道路運送法に基づく省令や通達の改正にも生かす。タクシーや「自家用有償旅客運送」など既存の公共交通について、デジタル化や電動化、自動運転技術も活用しながら、持続可能で利便性の高い移動手段へと進化させていきたい考えだ。
地方を中心に過疎化、高齢化が進展して運転免許証の返納も進む中、高齢者などの移動手段確保があらためて大きな課題となっている。一方、交通事業者の経営環境はコロナ禍の輸送人員の減少や人手不足などで依然として厳しいままだ。国交省は「コロナ前の需要回復は難しい」(自動車局旅客課)とも見通す。
一方で、日常生活や観光・ビジネス目的の来訪によるラストワンマイル・モビリティの潜在需要は大きい。中でも、タクシーやオンデマンド型などによる乗合タクシー、市町村やNPO(非営利団体)法人などによる自家用有償旅客運送に求められる期待は非常に高い。しかし、交通事業者の経営環境や現行法制などを理由に、地域の移動ニーズに十分応えることが難しくなっている現状が浮き彫りとなっていた。
新設した検討会では、委員から道路運送法の見直しやタクシー業の規制緩和、自家用有償旅客運送に関する運営協議会の負担軽減などを求める意見があった。
国交省は今後、地方のタクシー事業者や自治体などへのヒアリングを踏まえ、5月下旬に中間とりまとめを公表する。6月下旬には、官民連携による地域公共交通のデジタル化、脱炭素化に関するヒアリングととりまとめも行う。配車アプリなどのデジタルツールや電気自動車(EV)、自動運転車を導入や、制度面からラストワンマイル・モビリティを含む地域公共交通の活性化をどう目指すかを議論していく。
初会合の冒頭、堀内丈太郎自動車局長は「制度運用の柔軟化やDX(デジタルトランスフォーメーション)の導入などを組み合わせて、交通不便地域をどう減らしていくかを検討していく」と語った。
※日刊自動車新聞2023年(令和5年)2月21日号より