国土交通省は、自動車運送事業者が点呼時に運転者の酒気帯びの有無を確認する際に使うアルコール検知器の機能要件を厳格化する方向で検討する。有識者を交えた検討会を立ち上げ、成り済ましやすり抜けなど検査時の不正防止機能を追加できないか議論し、今年度中に結論を出したい考えだ。アルコール・インターロックの技術開発や普及への後押しも図るなど、飲酒運転防止の取り組みを一層強化して飲酒運転の根絶につなげる。
アルコール検知器の要件厳格化については、本人確認機能や検査時の映像、音声を記録・保存して運行管理者が確認できる機能の追加など虚偽報告の防止を狙いとする。今後、有識者や自動車運送事業者の業界団体などを交えたワーキンググループを立ち上げて要件見直しの検討を進め、「今年度中に(検討の)結果を出したい」(国交省)考えだ。
国交省や警察庁などはこれまでも、飲酒運転防止対策や厳罰化などの取り組みを強化してきた。2011年5月には「緑ナンバー」の事業者を対象に、運転前後のドライバーへの点呼でアルコール検知器を使った検査を義務付けた。さらに、今月1日から「白ナンバー」の事業者にも点呼とアルコール検知を義務化する対象を拡大。10月1日からは運転者の酒気帯びの有無の確認をアルコール検知を用いて行うことも義務付ける。
飲酒運転防止対策の厳格化の背景には、千葉県八街市で昨年6月に飲酒運転の白ナンバーのトラックが児童5人を死傷させるなど、飲酒運転による悲惨な事故が後を絶たないためだ。そのため、現在は「特段の性能上の要件は問わない」としているアルコール検知器についても、国交省は要件の厳格化が必要と判断したもようだ。
呼気からアルコールが検知された場合はエンジンがかけられない装置のアルコール・インターロックについても、国交省は指針を策定して実用化が進められているが、普及は遅々と進んでいない現状だ。後付け装置で手間がかかることや、自動車運送事業者にとって追加投資となるため導入が難しいことなどが背景にある。
そうした事情も踏まえつつ、国交省では、飲酒運転根絶に向けて、アルコール・インターロックの技術も今後普及していく必要があるとの考えだ。そのため、利便性向上やコスト低減などに向けた技術開発や事業者への普及促進を図るための支援なども検討する。
※日刊自動車新聞2022年(令和4年)4月5日号より