国土交通省は、人口減少などで経営環境が厳しく、顧客サービスの維持・向上が難しい交通事業者間の共同経営への移行を後押しする。長崎県でバス事業者2社の、徳島県では全国初の鉄道事業者とバス事業者間の共同経営について、独占禁止法特例法に基づく認可を行った。運行事業者の一元化などで業務効率化や収支改善に取り組むことで、経営力の強化や顧客の利便性向上につなげてもらう。交通事業者間の「共創」を促す新たなモデルとして位置付け、自治体や関係省庁とも連携しながら地域公共交通の再構築を目指す取り組みを支援していく考えだ。
国交省は18日、長崎と徳島の交通事業者から3日付で申請があった共同経営計画について、独占禁止法特例法を適用してそれぞれ認可した。共同経営に基づく運行は、それぞれ4月1日から実施する。
長崎では、長崎市内で路線バスを運営する長崎自動車と長崎県交通局が共同経営を行う。重複して運行する3地区(東長崎地区、日見地区、滑石地区)の路線を対象に、運行事業者を一元化する。需給バランスを踏まえて運行便数を適正化するとともに、ダイヤの調整で運行間隔の平準化を行って利便性の向上を図る。
共同経営を通じて、2022年度に約2億8500万円増の収益改善を目指す。取り組みの期間は25年3月31日までの3年間を計画している。
徳島では、徳島バスと四国旅客鉄道(JR四国)による共同経営が行われる。国交省によると、鉄道とバスという異なる交通モードの事業者間の共同経営に関する認可は全国で初めてという。徳島バス「室戸・生見・阿南大阪線」の一般道路区間の一部において、JR乗車券類での乗車を可能とし、鉄道とバスの双方を共通運賃・通し運賃で利用できるようにする。
鉄道の運行本数が少ない徳島県南部地域だが、共同経営を通じて南北に結ぶ交通サービスの運行本数を増やし、平均運行間隔時間を20分以上短縮することなどで利便性向上を図る。利用者の増加などで経営力の強化も期待できる。
JR切符などでバスを利用可能とすることで、初乗り運賃は不要となる。事業者間での運賃差を埋める配分方法は、徳島バスの正規運賃の半額をJR四国が徳島バスに支払う。
地域交通を担う交通事業者の経営環境は、人口減少などに加え新型コロナウイルス感染症の長期化で需要は縮小。利用者数は大幅に減少し、サービスの維持・向上を図ることが非常に難しくなっている。国交省では2月、鉄道事業者と地域の協働による地域モビリティ刷新に関する検討会を開催。鉄道事業者と沿線自治体との一層の連携を促し、持続可能な地域公共交通の再構築を支援するための具体的方策の検討を進めており、今夏に取りまとめる予定だ。
※日刊自動車新聞2022年(令和4年)3月24日号より