国土交通省は、大型車の衝突被害軽減ブレーキ(AEBS)で、歩行者に対する試験を新たに追加するなど性能要件を強化する。また、後退時に警報音を発する「車両後退通報装置」(バックアラーム)の装備も義務付ける。国連規則改正などの発効に合わせて国内基準を改正するもので、大型車の安全性向上を通じて交通事故の削減につなげる。
対象車両は、乗車定員が10人以上で車両総重量が3.5㌧超のトラック・バス。
AEBSに関する基準改正では対歩行者の試験を追加する。時速5㌔㍍で横断する6歳児相当のダミー(高さ115㌢㍍)に対して、走行車両が時速20㌔㍍で接近した際にダミーを検知して衝突しないことを要件として定める。
静止車両に対する試験も制動要件を厳しくする。走行する車両の速度を従来の時速20㌔㍍から時速70㌔㍍にまで引き上げた上で、前方の静止車両に衝突しないこととする。
新基準の適用日は新型車が2025年9月1日、継続生産車が28年9月1日。
車両後退時に、歩行者などを巻き込む事故を防止するため、バックアラームの装備を新型車は25年1月19日から、継続生産車は27年1月19日からそれぞれ義務付ける。エンジンがかかっている状態でシフトが後退に入れば自動で音を出すことを性能要件とする。警報音は「低」(45~60 デシベル )、「通常」(60~75 デシベル )、「高」(80~95 デシベル )の3レベルを定義し、通常レベルを必須とする。
このほか、自動運行装置に関する基準改正も行う。高速道路を走行する自動運転車「レベル3」が備える「自動車線維持システム」(ALKS)の上限速度を、時速60㌔㍍以下から時速130㌔㍍以下に引き上げる。乗用車などに限っては車線変更機能の要件も加える。新型車は9月、継続生産車は27年9月から適用する。
また、22年4月に成立した改正道路交通法を踏まえ、1月4日に自動運行装置の保安基準を改正した。運転者が不在で、走行環境条件を満たさなくなったり、自動運行装置が正常に作動しない恐れがある状態となった場合には、同装置によって車両を安全に停止させる規定を加えた。
※日刊自動車新聞2023年(令和5年)1月10日号より