国土交通省は、幼稚園などの送迎バスで児童の置き去り防止を支援する安全装置のガイドラインを年内に策定する。4日に立ち上げた官民によるワーキンググループ(WG)で、安全装置を販売済みまたは今後商品化を計画する装置メーカーなどを対象に商品のヒアリングを順次実施する。調査結果などを踏まえて、11月下旬までにガイドラインの素案を示す。安全装置の開発・早期普及と子どもの安全対策の強化に役立てる。
9月に静岡県牧之原市内の幼稚園で園児が送迎バスに取り残されて熱中症で死亡したことを受け、政府は関係府省に具体的な緊急対応策を10月中に取りまとめることを指示。29日の関係府省会議で、置き去り防止を支援する安全装置の設置について児童福祉法や学校保健安全法などに基づき義務化する方針を固めた。
国交省が4日に立ち上げて初会合を開いたWGは車両安全対策検討会の下に設置。自動車関連団体からは自動車技術総合機構、日本自動車工業会、日本自動車車体工業会、日本自動車部品工業会、全国自動車用品工業会が参画。座長は芝浦工業大学工学部機械機能工学科の廣瀬敏也准教授が務める。オブザーバーとして幼稚園や認定こども園などの関連団体と、内閣府など関連府省の関係者が出席した。
国交省は、置き去り防止を支援する安全装置を「ヒューマンエラーを補完するもの」と位置付ける。押しボタン式や児童検知方式を中心に現在開発・市販中の安全装置の精度などを踏まえると、あらゆる場面で車内への置き去りを完全に防ぐことを保証する安全装置は存在しないためだ。
安全装置を設置する対象車両は送迎バスに限定する。幼稚園などの事業者に過度な負担とならないように、新車への搭載だけでなく既販車に後付けできる安全装置も想定したガイドラインとする。電波法など各種法令順守をはじめ、一定の耐久要件や故障時などのフェールセーフ要件を満たしていることなどの具体的要件についてはWGで議論する。
安全装置を販売している企業や今年度内に商品化を計画している企業を中心に商品のヒアリングを順次実施し、ガイドライン策定に活用する。不具合の対応や保証期間についても調査し、ガイドラインの記載項目に盛り込む。来年度以降の商品化を検討する企業も想定できることや、より高度化した安全装置が今後商品化されることなどを踏まえて、来夏をめどにガイドラインの見直しを行う予定だ。
WGに出席した堀内丈太郎自動車局長は、送迎バスへの置き去りによる児童の死亡事故が昨年7月にも起きていることにも触れ、「ガイドラインを年内に策定し、速やかに対策が進むことに貢献したい」と述べた。国交省によると、幼稚園や認定保育園などの送迎バスは登録ベースで約2万台。ほとんどが児童の置き去りを防止する安全装置を装備していないのが現状という。
政府は、今月中に安全管理マニュアルの整備や送迎バスの安全装置改修支援など再発防止に向けた具体的な緊急対応策を取りまとめる。安全装置の設置に関する財政的支援は、内閣府、文部科学省、厚生労働省で議論して決定する。
※日刊自動車新聞2022年(令和4年)10月6日号より