国土交通省は、排出ガスの長距離耐久試験の監査を強化するため、自動車型式認証実施要領に関する通達の一部改正を行う。自動車メーカーに対して、型式指定の申請ごとに各社が記録・保管している測定値や測定条件など試験データの提出を求めて、型式指定後の監査で詳細に確認する。日野自動車のエンジン認証不正問題を踏まえて、同様の不正事案の再発防止につなげる。
排出ガスの長距離耐久試験では、自動車メーカーに①試験条件別走行キロメートル数②排出ガスの測定時期と測定回数③部品交換の内容―の提出を求める。監査時に、それらの記録の詳細確認だけでなく、同試験の実施状況が適切に管理・監督できているかも調べる。
現在は型式指定申請時に自動車メーカーが排出ガスの長距離耐久試験データを記録・保管しているが、国交省への提出を求めることで社内のチェック機能を働かせて、不正事案の防止や早期発見につなげる。監査・審査の強化に向けて、自動車型式認証実施要領の見直しなどを進めており、「できる限り早期に実現したい」(国交省関係者)考えだ。
国交省によると、日野は試験データの書き換えを行ったほか、試験中に部品交換したにも関わらず、必要な手続きを経ず試験を継続していた。また、試験中にエンジンの制御プログラムを量産時とは異なる設定にするなどしていた。
排出ガスの長距離耐久試験は、型式指定申請前に実施することから審査官の立ち会いを行っていない。国交省は自動車メーカーとの信頼関係を前提として、試験結果の提出を受けて審査している。日野による長期間にわたる数々の不正事案は型式指定制度の根幹を揺るがす事態であり、「(不正行為を)発見できなかった監査や審査の手法見直しや強化が求められる」と国交省自動車局は考えを示した。
国交省は、型式指定に関する不正事案の防止に向けて、自動車メーカーに対する監査・審査の強化などを行うと9日に発表。2016年以降の燃費不正問題や完成検査問題を受けて行った自動車メーカーに対する監査・審査の強化などの取り組みに加えて、排出ガスの長距離耐久試験と燃費試験に関する監査・審査について、さらなる強化を図る。不正行為の有無などの調査で虚偽報告が行われないように、自動車メーカーに社内調査の実施体制や調査方法の報告を求めるなどの対策も実施する。
※日刊自動車新聞2022年(令和4年)9月29日号より