国土交通省は、自動運転車を用いた運送事業者が行う輸送サービスの安全確保に向けて現行制度の見直しを始める。特定条件下で自動運転「レベル4」相当の公道走行を許可する制度を盛り込んだ改正道路交通法を踏まえ、今後は運転者が存在しない自動運転車を使った輸送サービスが行われることも想定されるためだ。7、8月に運送事業者や自動車メーカーなどにヒアリングを行い、新たに立ち上げた検討会で議論した内容を今年度内に取りまとめる。最終的には省令改正につなげたい考え。
8日に、有識者や業界団体の関係者などで構成する検討会の初会合を開催した。国交省ではこれまでに、旅客自動車運送事業者を対象に、限定地域で行う無人自動運転移動サービスの安全確保に関するガイドラインを2019年に策定していた。今回の検討会では、貨物自動車運送事業者も対象に加えることとした。
国交省は今後議論を進める上での基本的な考え方として、道路運送法、貨物自動車運送事業法に基づき、輸送の形態(自動運転車、有人運転車、運転者が存在する/しない)は関係なく、運送事業者は従来と同様の安全を確保する責務を負う「原則」は変えない。
今後、検討会で議論の時間が割かれるテーマの一つが、運転者が不在の自動運転車を用いた際の「運転操作以外の業務」の取り扱いについてだ。道路運送法、貨物自動車運送事業法で、運行管理者、運転者、車掌の詳細な業務を定めている。そのほとんどは運転操作以外の業務に関する項目で、運転者の場合だと事故発生時の旅客対応などが一例だ。
今夏に行うヒアリングでは、バス、タクシー、トラック事業者のほか、自動運転サービス提供者、自動車メーカー、地方自治体も対象に挙げる。中でも、自動車メーカーには、運転操作以外の業務について、将来的に車両側でどのような対応が可能となると考えているのかなどを聞きたい考えだ。
次回の検討会は秋頃の開催を予定する。今夏に行うヒアリングの結果報告を踏まえた論点整理と、取りまとめ骨子案を公表する。必要に応じてワーキンググループを開催し、追加検討を行う可能性もある。
※日刊自動車新聞2022年(令和4年)6月10日号より