【広島】国土交通省は、自動車整備士への認知度を向上させる取り組みとして、高校生の社会科見学を広島市で実施した。広島商業高校の3年生、男子12人、女子11人の計23人が日産プリンス広島(宮崎真澄社長)の比治山店(広島市南区)を訪れ、自動車業界や販売会社について学んだほか、ショールームや整備工場など店舗内を見学した。
この取り組みは、高校生の自動車整備に対する認知度向上を目的に社会科見学を通じて自動車整備士の仕事を、実際の自動車整備工場で見聞きして感心を高めてもらうことが狙い。今年3月に国交省が公表した「自動車整備の高度化に対応する人材確保の対策に関する中間とりまとめ」に基づく事業で、見学を希望する高校と受け入れ可能な整備事業者をマッチングして実現した。
同事業には自動車整備士の認知度向上だけでなく、Z世代の価値観を把握し、今後の施策に反映する狙いもある。西日本での実施は初めてで、6月~12月の期間に全国で実施を予定している。
当日行われた座学は、自動車業界や販売会社で働く人などをテーマにクイズを交えて進行した。整備士資格の取得方法として、整備事業者によっては奨学金制度を設けているなどの説明があり、熱心に耳を傾ける学生らの姿が見られた。また、工場見学では「もっと汚い職場をイメージしていた」などの感想に対し、工場案内をした整備士からは「映画やドラマで見るような全身油まみれになるようなことはなく、工場内もスポットクーラーなどで効率よく冷やされている」といった説明があった。
近年、整備業界は人材不足が深刻化し、自動車整備業の有効求人倍率は21年度で4.55倍と全職種平均の1.16倍を大きく上回る数値となっている。国交省が公表した中間とりまとめでは、人材の募集、人材の定着、人材の育成の3つの観点から対策を図るとしており、今後の取り組みにも注目が集まる。
※日刊自動車新聞2023年(令和5年)6月28日号より