一部で装着の義務化が始まった事故情報計測・記録装置(イベント・データ・レコーダ、EDR)の作動記録を安全対策や先進運転支援システム(ADAS)の改良に役立てられないか国土交通省が検討を始める。作動記録を集め、事故前後の運転操作やADASの作動状況を分析し、まずは記録の有効性を確かめる。効率的な収集体制づくりやプライバシーへの懸念を払拭する工夫も課題だが、記録の運用体制ができれば対策や改良の実効性が高まりそうだ。
EDRは、事故(急減速、エアバッグの作動など)の前後でスピードの変化量やアクセル・ブレーキペダル操作の有無、衝突被害軽減ブレーキの作動状態といった情報を自動で記録する装置だ。乗用車は2022年7月の新型車から装着が義務付けられ、大型トラック・バス(車両総重量3.5㌧超、定員10人以上)も26年12月からの装着義務付けが決まっている。交通事故の過失割合を割り出すのに使われているが、米国などではEDR記録が一般に公開され、自動車の研究に役立てることもできる。
国交省はまず、検討会を通じて①乗員傷害推定アルゴリズム(計算手順)の精度向上②ペダル踏み間違い時加速抑制装置の評価手法の充実③衝突被害軽減ブレーキの高度化―などといった記録の活用案を抽出。試験的に集めた記録を使って実際に役立つか試行を始める。最終的には、損害保険会社を通じて記録を入手したり、国交省がウェブサイトを開設するなど、記録の収集から分析に至る運用体制の確立を目指す。EDRデータ提供者の任意保険料を割り引くなどの仕組みも検討する。
EDRを通じたリアルワールドの記録を生かせば、事故実態のより詳細な把握や解析、ADAS作動条件の改良や評価につながるものと期待される。
※日刊自動車新聞2024年(令和6年)4月24日号より