国土交通省は、検査標章(車検ステッカー)の貼付位置を7月から運転席側上部端に変更する。「検査標章の貼付位置の見直し案」を公表した2022年6月当初は、前方かつ運転席から見やすい位置として「前面ガラスの運転席側上部で、車両中心から可能な限り遠い位置」としていた。ただ、パブリックコメント(意見募集)で400件を超える意見が寄せられたため、車両構造やドライブレコーダー、ETC車載機、フィルム式アンテナなどが原因で新たな貼付位置だと運転者の視界を妨げる場合に限り「運転者の視界を妨げない前方かつ運転席から見やすい位置」との例外規定を加えた。
国交省は「自動車検査業務等実施要領」を一部改正し、7月3日に施行する。同日以降、新たに車検ステッカーを貼付する車両が新基準の対象となる。すでに貼付している車検ステッカーの貼付位置を変更する必要はない。また、貼付位置が基準と異なることで、受検ができなくなるなどの措置は検討していないという。
貼付位置を見直すのは、車検証の有効期間が記載された車検ステッカーを車外から目視確認できることに加え、運転席側からも有効期間を確認しやすくし、車検の受け忘れなどを防ぐ狙いがある。国交省はまた、自動車検査証(車検証)の電子化に伴い、車検ステッカーの車内側に記載する有効期間満了日の字体やサイズを見直し、視認性を高めることにしている。
パブリックコメントでは、昨年6月から1カ月の間に435件の意見が寄せられた。見直し案の賛否をはじめ、車検ステッカーの様式や無車検車運行に対する罰則、取り締まり強化など意見の内容はさまざまだ。インターネット上で意見提出を呼びかけるウェブサイトが複数あり、多くの意見が寄せられたとみられる。
こうしたことから、国交省は当初予定していた「22年8月公布、23年1月施行」のスケジュールを延期。寄せられた意見を踏まえながら見直し案を再度検討し、例外措置を追加することに決めた。関連業界団体や自動車ユーザーへの周知期間が必要なことから施行時期も半年ずらした。
〈用語解説〉検査標章(車検ステッカー)
検査標章(車検ステッカー)は、道路運送車両法と同法施行規則で自動車のフロントガラスの内側に前方から見えやすい位置に表示するよう規定されている。具体的な表示位置は自動車検査業務等実施要領で定める。2004年1月から運輸支局などの窓口で印刷する方式とし、偽造防止対策を施した。23年1月4日からの自動車検査証(車検証)の電子化に伴い、記録等事務代行者は国土交通省が提供する「記録事務代行アプリ」を利用して車検ステッカーの印刷・発行ができる。車検ステッカーを貼らずに公道を走行した場合、同法第109条の罰則(50万円の罰金)が適用される。
※日刊自動車新聞2023年(令和5年)3月8日号より