国土交通省は、自動車検査(車検)の前照灯検査において、2024年8月1日からロービーム(すれ違い用前照灯)のみで基準適合審査を実施する。全面施行に向けた周知開始から5年が経過し、審査体制の整備も完了することから、これまで一部の自動車に対してハイビーム(走行用前照灯)測定を可能とした過渡期な取り扱いを廃止する。
国交省は、1995年12月に道路運送車両の保安基準を改正し、98年9月1日以降に生産された自動車を対象に前照灯の基準を設けたほか、原則としてロービーム測定による審査を実施することなどを定めた。しかし、当時はロービーム用の前照灯試験機が普及していなかったことなどから、経過措置としてハイビーム測定の審査を認めてきた。
具体的には、2015年9月1日以降、「原則としてロービーム測定を実施する」としていたが、16年6月1日からは全面施行に向けた過渡的な取り扱いを適用し、ロービーム測定の対象車両であっても、ヘッドライトテスターによるロービーム測定が困難な一部の自動車に対しては、ハイビーム測定での審査を可能としていた。左右のロービームを測定して判定が困難な場合は、照射光線が他の交通を妨げないことが確認できたものに限り「計測困難な自動車」とみなして、ハイビームに切り替えて測定し、基準適合性を審査していた。
審査実務を担う自動車技術総合機構(木村隆秀理事長)と軽自動車検査協会(清谷伸吾理事長)は、前照灯試験機の導入など審査体制を整えた検査場から順次、地元の自動車整備振興会などにロービーム用前照灯審査方法の変更を伝え、整備工場などへの周知徹底を要請している。地域によっては、過渡期取り扱いの廃止時期が早まる場合もある。
両団体の調べによると、ロービーム測定で基準不適合となる自動車は、①レンズ面の劣化②内部リフレクタの劣化③前照灯ユニットと相性の悪いバルブに交換した―などで、光度が不足した状態や配光が崩れた状態のまま受検しているケースが大半という。
今後、こうした車両が不合格となるため、両団体はロービーム測定対象車について、前照灯の光度や照射光線の向きが基準に適合するよう、受検前に適切な整備・調整の実施を呼びかけていく。
※日刊自動車新聞2023年(令和5年)9月5日号より