国土交通省は、医療機関や自動車メーカーと連携し、電動車の給電機能を活用した医療支援に関する知見を収集する。自然災害などに伴う停電時に、避難所や自宅などで電動車から医療機器に給電したいと医療従事者や介護者らから要望があることから、これに対応する。25日に都内で開かれる国立成育医療研究センター主催のイベントで、電動車から医療機器への給電実証を行う。災害時の在宅医療などに安心して給電機能を使用できる環境を整えるとともに、電動車の普及にもつなげたい考えだ。
実証は、リコー総合グラウンド(東京都世田谷区)で電動車から人工呼吸器のバッテリーへの給電を行う。在宅医療で人工呼吸器などの医療機器が必要な子どもとその家族を対象とし、実際に体験もしてもらう。トヨタ自動車、日産自動車、三菱自動車の3社が、電動車の提供などで協力する。
近年、電気自動車(EV)など電動車の給電・蓄電機能に着目し、自然災害時における避難所や被災者の支援に活用しようと電動車を導入する自治体が増えている。日産や三菱自なども系列ディーラーと連携し、自治体などと災害時時に電動車を派遣する協定を全国各地で締結している。
そうした中で、課題だったのが医療機器への給電で、電源の停止が人命に関わることから医療機器への給電は控えることが呼びかけられていた。電動車の給電機能は構造上、燃料切れや故障発生時などで停止してしまうからだ。
ただ、停電時など非常時には電動車の給電機能を活用したいとの要望も多かったことから、国交省は経済産業省や日本自動車工業会(豊田章男会長)などとともに医療機器の使用に関する調査を実施。2022年3月に「災害時における電動車から医療機器への給電活用マニュアル」の発行につなげた。人工呼吸器、酸素濃縮器、吸引器などの医療機器を対象に給電時の注意事項などを分かりやすく説明している。
国交省では、昨年11月にも川崎市総合リハビリテーション推進センター(川崎市川崎区)で、電動車から人工呼吸器への給電実証を実施した。トヨタが開発中のアプリを利用し、複数の自動車メーカーの系列ディーラーから電動車を派遣する実証も行った。今後も医療機関などと連携して実証を継続し、収集した知見を給電活用マニュアルの充実化などに役立てる。
※日刊自動車新聞2023年(令和5年)6月22日号より