国土交通省は、高速道路などの道路空間を活用して荷物を無人搬送する「自動物流道路」に関する検討会をこのほど開き、想定ルートとして東京・大阪間の幹線輸送を念頭に検討する方向性を示した。同区間の一部に「実験線」を設置し、インフラや輸送カートなど技術開発の進ちょくに応じて段階的に検証を進める。具体的な想定ルートを含む中間とりまとめを今夏に公表する。
国交省は、運転手不足など「物流の2024年問題」に対する取り組みの一環として、33年までに自動物流道路を整備し、実際に荷物を無人搬送できるようにしたい考えだ。自動物流道路を用いて運ぶ荷物の候補として「農水産品」「軽工業品」、書籍や衣服などの「雑工業品」を挙げた。国交省の試算によると、これら3つの貨物の物流量は東京・大阪間の場合、全物流量の3割近く(26%)を占めるという。
自動物流道路の構築に向けては、インフラや輸送カート、物流拠点(ハブ)、システムの開発と実証が要る。配送の自動化はもちろん、他の交通モードと接続する物流拠点における荷役機能の自動化も必要となる。採算性の検証も欠かせない。
実験線で行う実証は、各工程の自動化、物流標準化、ロジスティクスの最適化などの物流の省人化・効率化、脱炭素化を目指して行う。技術やオペレーションの検証にあたっては、技術開発の進ちょくに応じて段階的に進め、走行中給電や人工知能(AI)・IoT(モノのインターネット)によるスマートロジスティクスなどの新技術の積極的な導入を図っていく方針。
今回の検討会では、味の素など民間企業3社へのヒアリングや意見交換も行った。民間各社からは「運転手不足対策やBCP(事業継続計画)対策などにつながる」などとの声が出たほか「パレットや商品コードなどデータの標準化が必須だ」との意見も寄せられた。
中日本高速道路(NEXCO中日本)からは、自動物流道路に高速道路空間を活用した場合の論点が示された。中央分離帯などの地上部と地下部を比べた場合、地下の方が工事や保守管理で高速道路本線への影響が少ないとした。整備コストや工事期間は、用地買収や既存道路の構造物の変更などに依存し、大きく変動しそうという。
※日刊自動車新聞2024年(令和6年)5月17日号より