政府の有識者会議が技能実習制度の抜本見直しを検討するよう政府に求めたことについて、自動車整備業を所管する国土交通省の堀内丈太郎自動車局長は「前向きに受け止めている」と4月28日の定例会見で語った。政府はまた、特定技能制度に基づき、熟練技能を持つ外国人が取得できる在留資格「特定技能2号」の対象に自動車整備を加える案を与党に示した。要件を満たせば永住権の取得にも道が開ける。外国人材の受け入れが新たな局面に入る。
技能実習制度と特定技能制度のあり方を議論している政府の有識者会議は、技能実習制度の廃止を4月半ばに提言した。人材育成を通じた国際貢献を目的とする現行制度だが、技能実習生が企業の安価な労働力として使われている実態と目的が乖離(かいり)している。有識者会議は、人材の確保と目的とし、実態に即した新たな制度の創設に向けた抜本的見直しの検討が必要とも提言した。
技能実習制度に代わる新たな制度や、関連制度などの見直しに関する議論は引き続き進められており、今秋にも最終報告書がまとめられる予定だ。現行制度では「原則不可」とする技能実習生の転籍の緩和も検討される見通し。自動車整備分野も同制度の対象職種で業界の関心は高い。堀内自動車局長は「どのような制度になるのか、引き続き見守っていきたい」と話した。
一方、特定技能制度は、人手不足が深刻な産業分野で、一定の専門性・技能を持つ外国人を受け入れる仕組みとして2019年4月に始まった。自動車整備分野は、最長5年の在留期間を認める「特定技能1号」の対象職種だ。22年12月末時点で、自動車整備分野の特定技能1号在留外国人は1738人いる。
特定技能1号と比べ、さらに高い技能・知識の水準と指導者・監督者としての力量が備わる特定技能2号の対象職種は「建設」「造船・舶用工業」に限られる。自動車整備分野でも、工場長などを担える外国人材を増やすため、法務省をはじめとする関係省庁で検討した結果、特定技能2号への追加が適当であると判断した。対象職種の拡大案は4月末に自民党の外国人労働者等特別委員会で示された。与党内での審議と了承を経て、政府は6月の閣議決定を目指している。
※日刊自動車新聞2023年(令和5年)5月1日号より